ときネット,地域連携,医療連携,ヒアリングフレイル">
本文へスキップ

あなたの健康と介護を支えます
しばた地域医療介護連携センター

知って得する健康講座HEALTH CARE

〜聴こえの衰えが招く健康への影響と対策〜

目次
1. 聴こえの衰えとは
 何歳から難聴になる?有病率は?

2. 聴こえの衰えの早期発見のため4つのサイン

3. 聴こえの衰えがもたらす影響
 認知症の発症リスク1.9倍

4. 聴こえの衰えに対する予防と対策方法
 @定期的な聴力チェック(セルフ検査方法も紹介)
 A難聴進行を抑える方法や食事
 B補聴器の活用と購入時の注意点
 C適切な話し方やコミュニケーションの工夫
 D生活環境の調整

5. 家族や介護者ができるサポート
 @耳鼻科への相談
 A心理的サポート
 B補聴器購入の助成制度3つ

6.まとめ


【1. 聴こえの衰えとは】
 加齢に伴う聴力の衰えにより、日常生活でのコミュニケーションに支障が出始めます。単なる聞こえの低下だけでなく、それに伴う社会的な活動の制限や、心身の機能低下までおこる
のです。高齢者の4人に1人が聴力の低下を経験すると言われていますが、多くの方が
「年のせい」と考え、適切な対処を先送りにしがちです。しかし、早期発見・対応により、生活の質の維持向上が期待できます。

高齢者の聴力低下の実態
 高音域の低下: 高齢者は高音域の音が聞き取りにくくなる傾向があります。特に40代から50代にかけて、高音域の聴力低下が始まり、その数は1割程度です。65歳以上から急に難聴になるひとが増えて、約30%が何らかの程度の聴力障害を経験しています。75歳以上では7割以上が難聴で、補聴器が必要なほどの中等度難聴の人は2から3割です。
 音の聞こえ方も変化します。音のひずみと理解の難しさが生じます。 音が小さく聞こえた
り、音がひずんで聞こえたりすることがあり、言葉の理解が難しくなります

                
                 図1
                  https://www.ncgg.go.jp/ri/advice/33.html

【2. 聴覚の衰えの早期発見のための4つのサイン】
ご家族にこんな様子が見られたら、注意してあげてください。

@会話での聞き返しが増える
「え、何?」が口癖に…会話での聞き返しが増える。 以前はスムーズにできていた会話も、 聞き返すことが多くなると、コミュニケーションがうまく取れず、ご本人にもストレスが溜まってしまいます。

Aテレビの音量が大きくなる
テレビの音が大きすぎる! 家族から「うるさい」と注意されるほどテレビの音が大きい場合 は、聞こえにくさを補おうとしている可能性があります。

B人混みでの会話が困難
人混みでの会話がまるで外国語… 雑音が多い場所では、必要な音だけを拾うのが難しくな
りがちです。スーパーなどでの会話が聞き取れない場合は要注意です。

C電話での会話が難しい
電話の声が聞き取れない 電話は相手の表情が見えないため、より聞き取りづらさを感じま
す。「聞こえない」「よく分からない」と特に知らない人からの電話を避けるようになった
ら、注意が必要です。特に、電話の音質が悪い場合や、背景ノイズが多い場合には、会話がさらに難しくなります。

【3.聴こえの衰えがもたらす影響】
難聴のある人は、正常な聴力を持つ人に比べて、10年後に認知症を発症するリスクが1.9倍
高いと報告されています。 それでは、なぜ難聴が認知症のリスクとなるのか。難聴と認知症の関係は、なぜそんなに強いものなのか。2つの理由があります。

一つ目の理由は、聞こえが悪いまま放置すると、脳が萎縮してしまうからです。
実際に、MRIなどの脳の画像検査で明らかになっています。長い期間難聴で過ごしている人
は、大脳の側頭葉や、記憶を制御する海馬などの脳が萎縮していることが、画像で証明され
ています。長い間難聴で過ごしていると、音の情報、つまり刺激が脳まで届かなくなります。刺激のない脳は反応しないため、神経細胞が減っていきます。それが長期間続くと、脳は
段々と小さくなるのです。

難聴は聞こえ以外の脳にも影響を及ぼします。
難聴の人は、聞こえにくい音を一生懸命聞くために、常に意識を集中する必要があります。そうすると脳が、考えたり、判断したり、記憶することにエネルギーをまわすことができなくなります。音を必死に聞くので、脳がエネルギーを消耗しすぎるからです。エネルギー不足で記憶や判断を担当する神経細胞への刺激がなくなります。その結果、記憶を司る脳の領域が縮小します。難聴を放置すると、記憶の脳の領域も小さくなって、認知症が起こりやすくなるのです。

もう一つの理由は、難聴が社会的な孤立やうつ病を引き起こすからです。
聞こえが悪くなると、聞き返す回数が増えます。聞き返された相手は、自分の言葉を理解してくれないとイライラする場合もでてきます。なので、聞き返しすぎると悪いなあと難聴の人は思います。何回もこのようなことがあると、適当に聞いているふりをしてやりすごすことも増えます。こういった経験から、難聴が進んだ人は、人との会話が面倒に感じることが増えま
す。コミュニケーションを取ることが面倒になり、人の集まりに参加したくなくなります。人の集まりに参加しても楽しめないと思うからです。その結果、難聴の方は、社会的な孤立が進みます。

実際、難聴により社会的な孤立に陥るリスクは、難聴のない人の2.8倍高いといわれていま
す。さらに、難聴の人々は不安やうつ病の発生率が1.5倍高いこともわかっています。社会
的な孤立やうつ病も認知症のリスクです。難聴によってコミュニケーションが障害され、難聴者の生活への意欲が低下し、認知症が発症するのです。

【4. 聴こえの衰えに対する予防と対策方法】
@定期的な聴力チェック
 加齢性難聴は徐々に進行するため、自分自身では気づきにくい難聴です。定期的に聞こえ
のチェックをすることで早めに見つけることができ、難聴によって起こる悪影響を防ぐことができます。特に、テレビの音量が大きくなった、聞き返すことが増えたなど、変化を感じたら早めに耳鼻科を受診することが大切です。しかし、聴覚チェックのために医療機関を定期的に受診するのは、時間的にも身体的にも負担になります。
そこで活用して頂きたいのが「オンライン聴覚検査」です。スマートフォンやパソコンで検索すると、いろいろなアプリやサイトが出てきます。

受診できない場合は、アプリなどで聴力を一度チェックすることをお勧めします。
お勧めのアプリは以下の4つです。

A:聞こえチェック 高音域の聴力低下を自覚できる
https://panasonic.jp/hochouki/download/dagehg/hearing2.html

B:東京医療センター「オンライン聴覚検査」 言葉やリズムを検査できる
https://nancho-db.com/pitch_check/

C:WHOが開発した「hear WHO」英語のみ
https://www.who.int/teams/noncommunicable-diseases/sensory-functions-disability-and-rehabilitation/hearwho

D:みんなの聴能力アプリ 雑音下での言葉の聞き取りを確認できる
https://u-s-d.co.jp/mimicare/

A難聴進行を抑える方法や食事
難聴発症には、遺伝の影響が半分を占めますが、これは避けられません。
残り半分のリスク因子は「男性」「職業上の騒音」「生活習慣病」の3つです。
騒がしい職場で長く働くこと、その作業の時に耳栓を使わない習慣があると、難聴の進行が
早まります。若い時からの、大音量の音楽なども難聴を引き起こすので、イヤホンの長時間
使用は避けてください。

2021年に韓国で行われた9万4000人を対象にした調査では、難聴を進行させる生活習慣病
が明らかになっています。それは「空腹時の高血糖」「お腹周り大きさ」「高血圧」「高脂血症」の4つです。これらの生活習慣病が動脈硬化を引き起こし、耳の奥の神経細胞への血流
が減り、難聴になると考えられています。
適切なカロリー制限と血糖値を下げる食事を心がけることが、難聴の進行を遅らせます。
マウスの研究では、カロリー制限が内耳神経の細胞死を防ぐということが確認されています。また、糖尿病の薬「メトホルミン」を服用すると、難聴の発症リスクが47%低下するという報告もあります。

また、老化予防に役立つ抗酸化物質は、難聴予防にも効果的です。
抗酸化物質は細胞のエネルギーをつくるミトコンドリアの損傷を防ぎ、神経細胞の健康維持を助けます。動物実験では、タウリンやコエンザイムQ10などの抗酸化物質が難聴の進行を
抑える効果が確認されています。これらのサプリメントの摂取や、抗酸化作用の高いビタミンCやE、ポリフェノールを多く含む食品を摂ると良いでしょう。

B補聴器の活用
加齢性の場合、難聴自体を治すことは出来ません。
聴力低下が確認された場合、補聴器の使用が効果的です。補聴器は、特に加齢性難聴や感
音難聴の場合に、音を適切に内耳に届けることで聞こえを改善することができます。現代の
補聴器は小型化や性能の向上が進み、使用者の状況に合わせて細かな調整が可能です。
ただし、補聴器の使用には慣れが必要なため、半年程度は調整が必要となります。

補聴器購入時の主な注意点を説明します。
A:耳鼻科医の診察を受ける。
耳あかなどで聴力低下をきたしている場合があるからです。聴力検査で状態を正確に把握で
きますし、自治体の補聴器購入の補助制度を利用するための診断書の発行も可能です。
B:認定補聴器技能者のいる販売店を選ぶ。
「認定補聴器専門店」は、国家資格を持つ「認定補聴器技能者」が在籍しており、適切なアドバイスと調整を提供してくれます。インターネット販売や訪問販売は、調整やアフターサービスが不十分な場合があり、注意が必要です。
C:試聴を行う。
できるだけ長い試聴期間がある店を選んでください。店頭だけではなく、家や生活の場で試
聴して下さい。1から4週間程度は、無料で実際に家に持ち帰り使用することができます。

C適切な話し方やコミュニケーションの工夫
聞こえにくい方とコミュニケーションをとる際には、以下の点に注意しましょう。
これにより、情報がより正確に伝わります。

・背景ノイズを減らすために、静かな場所で会話を行う。
・相手の顔を向いて、正面から話しかける。
・大きな声で話すのではなく、口をはっきり動かして、ゆっくり話す。
・キーワードを強調する、代名詞を避け具体的な名称を使い、短い文章で話す。
・重要な情報を伝える際には、言葉を重ねて伝える。
・ジェスチャーや表情、身振りも交えて伝える。
・要点を紙に書いたりする。

D生活環境の調整
生活環境を整えましょう。
周囲の雑音を減らし、聞き取りやすい環境を作ることが重要です。

テレビやラジオの音量は適切に。
・話しかけるときは、周りの音(テレビ、音楽など)を消す。
・カーテンやカーペットで、部屋の反響音を抑える。
・明るい照明を使用し、相手の顔や唇の動きが見えやすくする。
・必要に応じて補助機器(テレビ用ワイヤレスヘッドホン、電話機用の補聴器アダプター
など)を導入。

【5. 家族や介護者ができるサポート】
聞こえにくさは、本人だけでなく、周りの方の協力も大切です。少しの工夫と配慮で、コミュニケーションを円滑にすることができます。これらの対策を組み合わせることで、健やかな生活を維持することが可能です。


@耳鼻科への相談
聴力低下の初期段階で専門機関に相談することで、早期治療やサポートを受けることができ
ます。補聴器相談医のいる耳鼻科クリニックなどに相談します。
補聴器相談医とは、コミュニケーションの支障となっている難聴に有効な補聴器を適切に選
んで使用できるように対応することを目的とした医師です。一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭
頸部外科学会の「認定補聴器相談医名簿」から検索することができます。

新潟県補聴器相談医名簿
https://www.jibika.or.jp/uploads/files/certification/meibo_pdf/15_niigata.pdf

A心理的サポート
日常的なコミュニケーションが困難になっている場合、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談し、適切なサポートを受けることが重要です。
また聴こえの衰えに対する心理的なサポートも重要です。聞こえにくさによる不安や孤立感を和らげましょう。本人の気持ちをじっくりと聞き、共感する姿勢を示しましょう。「何も聞こえないわけではない」「あなたのことを理解したいと思っている」など、前向きな言葉をかけることも大切です。

B補聴器購入の助成制度3つ
A:補聴器の購入にあたっては、自治体や保険による助成制度を利用できます。
新潟県のすべての市町村で、補聴器の購入費用の一部を補助してくれる制度があります。
一定の条件があります。耳鼻科での検査結果による診断書と補聴器専門店からの見積もり
書を合わせて役場に提出します。
村上市:
https://www.city.murakami.lg.jp/soshiki/36/nanchoji-hochokikonyu2.html
関川村:
http://www.vill.sekikawa.niigata.jp/life/1866/3503/4315/index.html
胎内市:
https://www.city.tainai.niigata.jp/life/hochoukijosei.html
新発田市:
https://www.city.shibata.lg.jp/kurashi/kenko/kaigohoken/hokengai/1018461.html
聖籠町:
https://www.town.seiro.niigata.jp/kurashi05fukushi/123.html
阿賀野市:
https://www.city.agano.niigata.jp/soshiki/shakaifukushika/shogaishafukushi/7147.html
粟島浦村:
https://www.vill.awashimaura.lg.jp/reiki_int/reiki_honbun/e505RG00000405.html

B:医師の診療や治療のために直接必要な補聴器の購入費用は、医療費控除の対象となる。
補聴器の購入で医療費控除を受けるには、次の2つの条件を満たす必要があります。
@一般社団法人耳鼻咽喉科学会が認定した補聴器相談医が、「補聴器適合に関する診療情報
提供書(2018)」により、補聴器が診療等のために直接必要である旨を証明している。
A補聴器を購入するお店が「認定補聴器専門店」か「認定補聴器技能者が在籍するお店」で
ある。
医療費控除は、本人や扶養家族のために支払った医療費が、国の定める一定金額を超えた
場合に利用できる所得控除のひとつです。会社員であれば所得税などが少なくなる、もしくは還付金を受けることができます。年末調整では医療費控除はできませんので、確定申告が必
要です。

C:高度難聴の場合は、聴覚障害の身体障害者に認定される場合があります。
耳鼻咽喉科専門医のいるクリニックでの診断が必要になります。認定には条件が厳しく定め
られています。当てはまる場合は、認定申請書類を書いてもらい役場に提出し1から2か月
程度で判定されます。県と市町村から補聴器購入に補助が9割程度でて、自己負担が軽減
されます。ただし耳元で会話しないと聞こえないほどの高度難聴の場合に限られます。


【6.まとめ】
加齢による聴力の低下は、多くの高齢者が直面する自然な変化ですが、それを放置すること
は認知機能の低下や社会的孤立など、深刻な影響をもたらす可能性があります。しかし、早
期発見と適切な対応により、その影響を最小限に抑えることができます。
定期的な聴力チェックの実施、必要に応じた補聴器の使用、そして周囲の方々の理解とサポ
ートがあれば、聴こえの衰えがあっても、活動的で充実した生活を送ることが可能です。この記事で紹介した具体的な対応方法を参考に、ご本人に寄り添った支援をお願いいたします。


著者プロフィール                              

富田雅彦(とみた まさひこ)
富田耳鼻科クリニック院長
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定専門医
補聴器相談医







登録者数10万人超えのYouTubeチャンネル「耳鼻科医富田のいいみみCh」を通して、病院に受診しないで済むように役に立つ医療情報を発信中。
https://www.youtube.com/@NiceEar

プロフィール                         </p>
          </div>

          <p></p>
          <p><br>
          </p>
        </div>
          <div id=

このページの先頭へ

contents

かえつ在宅医療推進センター

〒957-8577
新発田市本町4丁目16-83

TEL 0254-28-7914