教室の中でしか通用しないシステム


学校は社会生活のシミュレーションの場であり、社会へ出る前段階のトレーニングの場である、と考えている。
そこでのシミュレーションやトレーニングは、社会生活で生きるものでなければいけない。
異論を唱える人は、まずいないだろう。

ところが、その教室でしか通用しないシステムが子どもたちに浸透してしまい、教室の外では通用しないということに教師も子どもも気づいていない場合がある。

例えば“ハンドサイン”と呼ばれるもの。
これは、あの「熱中時代」が源流か。
教師の発問に対して子どもたちが挙手するのだが、確かこんなシステムになっていた。

・パーで挙手・・・自信がある。
・チョキで挙手・・・ちょっと自信がある。
・グーで挙手・・・全然自信がない。

「これで全員が手を挙げることができる」「すばらしい」ということになって、全国の教室で様々なバリエーションが開発された。

・質問・・・人差し指を立てる。
・賛成・・・グー
・付け足し・・・Vサイン
などなど。

私もやってみようとしたことがあったが、一時間で止めてしまった。

口で言えばよいのだ。
実際、口で言うのが普通だろう。

と考えたからである。

それを明確に意識したのが、野球部の監督をしている時であった。
ある大会の日程を書いたプリントを配りひと通り説明した後で
「質問のある人?」
と聞いたらば、部員の一人が黙って人差し指を挙げていたのである。
20人程度が車座になっていて、皆シーンとしている状態であるにも関わらず、一本だけ高々と挙げられた人差し指・・・かなり不気味である。

「ハイ」
とか
「質問です」
と言えば済むのだ。

市場の競りやかつての兜町の証券取引では、声が飛び交っている中なので指で記号を示す必要があるが、日常生活ではもちろん、教室でそんな必要はない。

質問がある時に
「質問です」
とちゃんと言える子を育てるのが本当だろう。

自信がない子だって、自分の考えを持っているのであれば、教師に指名されてちゃんと答える。
教師はほめてやればいい。
それだけのことだ。

最近見かけなくなったが、まだやってる人はいるのだろうか。
いらないよ、ハンドサイン。

2004.10.11  記