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しばた地域医療介護連携センター

知って得する健康講座HEALTH CARE

心がけよう摂食嚥下のケア

【はじめに】
 食べ物を食べること、水分を飲むことなど、嚥下するという行為は毎日繰り返し行われています。ゴクンという一連の嚥下運動が起こる際には様々な筋や神経の働きが関わっていますが、加齢と共に神経の伝わり方の変化や喉・舌などの筋力低下がみられるようになってきます。嚥下機能は50歳前後から徐々に低下していき、嚥下障害は高齢であれば誰にでも起こり得る身近な障害と考えられます。いつまでも口から食べられるためには誤嚥を防いで肺炎を起こさないことが重要です

もくじ
1.摂食・嚥下とは
2.嚥下5期モデル
3.誤嚥・誤嚥性肺炎について
4.誤嚥・誤嚥性肺炎の徴候と予防について
5.食事姿勢・食事中の環境調整
6.食事形態の調整飲み込む力や咳込む力を鍛える体操
7.口腔ケアについて
8.おわりに

【摂食・嚥下とは】

 食べるとは食物が認知され、口腔・咽頭・食道を経て胃に至ることをいい
ます。食べたり(摂食)飲んだり(嚥下)することは、単に飲み込む力のことを指すものではなく、五感で食べ物を認知してから食道へ流れるまでの、口腔・咽頭・喉頭・食道の各器官の一連の流れとして行われる協調運動です。

【嚥下5期モデル】

摂食・嚥下の協調運動については5期に分けて考えると整理しやすいです。
@ 認知期(先行期)
五感で食物を認知しどのように食べるのかを判断する、摂食・嚥下のスタートとなる時期です。ここが出来なくなってくると安全な摂取が困難となります。
A 準備期
認知した食物を口腔内に取り込み、咀嚼し唾液と混ぜて飲み込むのに適した形態(食塊)に加工する時期です。
B 口腔期
食塊が舌の運動によって口から喉まで送り込まれる時期です。
C 咽頭期
食塊が喉から食道の入り口まで移送される時期で、ゴックンの反射が起こる時期です。
D 食道期
食塊が食道の入り口から胃の入り口に達するまでの時期です。

【誤嚥・誤嚥性肺炎について】

誤嚥とは、食道に入るべき食物や水分、唾液などが声門を越えて気管に誤って入ることです。誤嚥により、口腔内の細菌が肺まで到達して炎症を引き起こすことを誤嚥性肺炎といいます。
誤嚥の代表的な症状として「むせ」がありますが、「むせ」とは、誤って気管に異物が入ったときに異物を外に排出する仕組みのことで、気道防御の役割を果たしています。誤嚥の種類には不顕性誤嚥といって「むせ」のない誤嚥もあります。不顕性誤嚥は加齢や脳血管障害などによる喉の感覚低下が原因となり、本人や周囲が気づきにくく、気づかないうちに誤嚥する量が増え肺炎を引き起こす危険が高くなってしまうため注意が必要です。

【誤嚥・誤嚥性肺炎の徴候と予防について】

 誤嚥・誤嚥性肺炎を疑う徴候は以下の通りです。

むせ・呼吸切迫・咳・痰量が増える・喉の違和感・ガラガラした声への変化・食事に時間がかかる・食後の疲労が強い・体重が急激に減少した・発熱


 誤嚥・誤嚥性肺炎の予防については以下が挙げられます。
・食事姿勢、食事中の環境の調整
・食事形態の調整
・嚥下関連筋、呼吸機能向上のトレーニング
・口腔ケア

【食事姿勢・食事中の環境調整】

食事摂取時は飲み込みに関わる筋肉がリラックスして食事ができる姿勢に調整することが大切で、頚部前屈姿勢の保持が基本です。目安としては下顎から胸部まで4横指程度の間隔です。車椅子摂取(図1)、ベッド上摂取(図2)での姿勢のポイントは以下のとおりです。

  枕を入れて安定をよくする オーバーテーブルを適当な高さ、位置に置く 腰深く座り、安定をよくする
    【図1】

  枕を入れて安定をよくする オーバーテーブルを適当な高さ、位置に置く 腰深く座り、安定をよくする
       【図2】

食後についてはすぐに横にならず、胃からの逆流物による誤嚥防止のためリクライニング位30度程度を1〜2時間保つよう心掛けます。また、食事姿勢の他にも介助を必要とする場合には、介助する側が心掛ける点もあります。介助者が立った状態で介助を行うと介助される側の顎が自然と上がり、飲み込みづらく誤嚥しやすい頚部伸展位となってしまいます。介助者側は目線の高さを合わせて介助をするのが望ましいです。その他、1口量が多く1度で嚥下できずにムセたり、喉に残ったりする場合は小さいスプーンで自然と1口量を少なく抑えるよう工夫が必要な場合もあります。また、周囲の刺激に注意が逸れ、食事に集中できない場合はカーテン等で周囲の刺激を遮る、テレビを消す、必要以上の声かけを行わない等、集中できる環境を設定することも誤嚥防止には有効です。

【食事形態の調整】

嚥下しやすい形態、しづらい形態

 飲み込みやすいもの  飲み込みづらいもの
やわらかい
粘度があり、まとまりやすい
1口で口に入りやすい、噛みやすい
性質、硬さが均一

例:お粥、茶わん蒸し、プリン、ヨーグルト、温泉卵等

 ボロボロ(ばらける)
 →ご飯、そぼろ、かまぼこ
パサパサ(パサつく)
 →パン、カステラ、いも類
サラサラ
 →水、お茶、ジュース
ペラペラ(はりつく)
 →海苔、わかめ、青菜類

嚥下しやすい形態、しづらい形態食事中にムセやガラガラした声が聞かれる、食後、食べ物が上手に飲み込めず咀嚼し続けたり口の中に残っている等の症状がみられる場合は食事の形態が合っていないのかもしれません。
ご飯をお粥に、おかずはより軟らかいものにしたり餡をかけてまとまりやすいものに、水分についてはトロミをつけると飲み込みやすくなります。

【嚥下関連筋、呼吸機能向上のトレーニング】

 口腔内や飲み込みに関わる筋の準備ができていない状態で食事を始めると、摂食・嚥下が円滑に行われません。また、呼吸機能を鍛えることで、ムセた際に十分な呼気で吐き出すことができるよう食事への準備を整えます。
〈首、肩甲帯周囲ストレッチ〉

 

 
〈文献〉藤谷順子ほか編:誤嚥を防ぐケアとリハビリテーション,(株)日本看護協会出版会p90

〈口と舌の体操〉

〈呼吸トレーニング〉

〈嚥下おでこ体操〉

【口腔ケアについて】

口腔ケアの目的は、口腔衛生状態を保ち、歯や歯周組織の保存を行うことが一番の目的です。口腔内が不衛生になることで歯周病など口腔内慢性感染巣の全身への広がりが、誤嚥性肺炎の原因となることが分かってきました。そのため、口腔ケアは重要であり、特に摂食・嚥下障害がある場合にはより重要となります。

口腔ケアは図の道具を使用して以下の手順で行います。
寝たきりの方には声掛けしてしっかり起きてもらい、姿勢を調整してから行います。
@口腔内を湿らせる
A義歯があれば外して洗浄する
Bスポンジブラシで大きな汚れを取る
C歯ブラシで洗浄
D舌ブラシで洗浄
Eうがいまたはスポンジブラシで口腔内全体を清掃する


〈文献〉才藤栄一:摂食・嚥下リハビリテーション第2版,p220,2007

【おわりに】

 嚥下障害は脳血管疾患の発症を機に、または加齢に伴い誰にでも起こり得る障害です。口から安全に食べるためには誤嚥を防いで誤嚥性肺炎を引き起こさないことが重要で、摂取時の姿勢や食事形態の工夫、トレーニングによる機能向上、口腔ケアを適切に行うことが大切になってきます。誤嚥性肺炎を予防していつまでも口から食べられるよう、健康維持に努めていきましょう。


著者プロフィール                              

椎谷 睦(しいや むつみ)
新潟県立新発田病院
リハビリテーション科言語聴覚士

 
 
 
 
 

プロフィール                         </p>
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