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しばた地域医療介護連携センター

知って得する健康講座HEALTH CARE

まずはお口の健康を!

【はじめに】

 どんなに年をとっても好きな物、おいしい物を食べたいものです。しかし、これまで食べられたものが、年齢を重ねて行くにつれて、食べられなくなることがあります。例えば、『歯を失って固いものが食べられなくなった。』、『むせるようになり、トロミのついた水しか飲めなくなった』などが上げられます。このような状態へ陥らないために本講座では、近年注目されている『オーラルフレイル』について、皆さんと学んで行きたいと思います。

もくじ
1.フレイルとは
2.フレイルは三つに分かれる
3.オーラルフレイルとは
4.オーラルフレイルの四段階
5.オーラルフレイルへの対応

【フレイルとは】

  どなたもお年を召されると、心身の機能は徐々に低下していきます。そして、虚弱に傾きながら生活の自立度が低下し、要介護状態に陥っていく場合が多くなります。元気で健康に過ごせる期間を伸ばし、そして要介護状態の悪化を防ぐためには、病気の予防、早期発見早期治療とともに、体の衰えを防いでいくことが大切になります。そこで、2014 年に日本老年医学会 からこの体の衰え、虚弱のことを『フレイル』と呼ぶことが提唱され、最近対策が本格化してきました。

【フレイルは三つに分かれる】

この『フレイル』と呼ぶ時期、状態は次の観点で定められています。
1【中間の時期】健康な状態と要介護状態の中間地点である
2【可逆性】しかるべき適切な介入により機能(予備能力・残存機能)を戻すことができる時期である
3【多面性】骨や筋肉を中心とした身体的な虚弱(フィジカル・フレイル)だけではなく、精神心理/認知の虚弱(メンタル/コグニティブ・フレイル)、及び社会的な虚弱(ソーシャル・フレイル)が存在する

 フレイルの状態になると、これらの複数の要因が絡み合い、対策を施さないと負の連鎖を起こしながら生活の自立度が低下していきます。(図1)


【図1】

 これまでの調査研究により、生活の自立度を維持、改善することに関係するのは「社会参加」「栄養」「身体活動」の3つが非常に大きな要素であると言われています。そして、フレイルの最初の入り口は、「社会とのつながり」であると言われています。(図2)


【図2】

 社会的活動が低下すると、全身的な筋肉の減少も相まって安静時代謝が減り、消費エネルギーも減ることから、食欲(食事摂取量)低下に傾き、低栄養や体重減少に陥っていき、次なる体力の減少を促すという、ドミノ倒しのような負の連鎖を示しています。この負の連鎖をいかにより早期から断ち切れるのかが大きな課題です。ご近所やお友達とのお付き合い、ボランティア活動、そして地域での集いの場への積極的な参加などがフレイル予防の最初の大切な部分になります。そして、必要な栄養をしっかりと摂りながら体を動かすことによって筋肉を維持することが重要になります。

【オーラルフレイルとは】

 オーラルフレイルは、口に関するささいな衰えを放置したり、適切な対応を行わないままにしたりすることで、口の機能低下、食べる機能の障がい、さらには心身の機能低下までつながる負の連鎖が生じてしまうことに対して警鐘を鳴らした概念です。 「しっかり歩き、しっかり食べる」ことが身体的フレイル対策の基本であり、栄養面、特にタンパク質の摂取が全身的な筋肉の衰えを防ぐためには非常に重要であることから、「食べる力」を維持すること、そして、口の機能という全身から見て細かな部分の最初の変化を見逃さないことが、フレイルを察知して、対策を立てていく上で大切なことから、フレイルの悪循環に陥らないための鍵の部分の一つとして注目されています。(図3)


【図3】

【オーラルフレイルの四段階】

 オーラルフレイルは、図4に示すような4つのフェーズで考えられています。第1レベルから徐々に始まり、レベルが進行するに従い、全身的なフレイルへの影響も大きくなっていきます。(図4)


【図4】

「第 1 レベル 口の健康リテラシーの低下」は、生活範囲の狭まりや、精神面の不安定さから始まり、「お口の健康に対する関心の度合い度 (口腔リテラシー) の低下」を経て、歯周病や残存歯数の低下のリスクが高まる段階です。

「第 2 レベル 口のささいなトラブル」は、日常生活における、ささいな口の機能低下(例えば滑舌の低下、食べこぼしやわずかのむせなど)に伴う食を取り巻く環境悪化の徴候が現れる段階です。例えば「最近固いものが食べ難い。齢だから固いものは避け柔らかいものにしよう。 消化にも良いかもしれないし」などという考えから始まった食事選びが習慣化し、さらに老化による機能低下も相まって口の機能低下が進む段階です。つまりこのレベルは、ひとつ目のレベルにある「口の健康への意識の低下」から、誤った口に関する健康観による食習慣の変化、さらに老化も重なり機能低下が進みますが、その機能低下は微細であることから自覚することなく潜在的に機能低下が進むことが多い状況にあります。特に現在の食事環境は柔らかい食品が容易に摂取できることから、その機能低下を自覚しにくく、進行して初めて「噛めない食品が増えた」などと自覚することも少なくありません。

「第 3 レベル 口の機能低下」は、口腔機能の低下(咬む力の低下や舌運動の低下)が顕在化し、全身の筋肉の衰えや運動能力の低下(サルコぺニアやロコモティブシンドローム)、栄養障害へ陥る段階です。このレベルの対象者として、「口腔機能低下症」という診断がつく人もいることから、対応は歯科診療所で行われることとなります。

「第 4 レベル 食べる機能の障がい」は、摂食嚥下機能低下や咀嚼機能不全から、要介護状態、 運動・栄養障害に至る段階で、「摂食嚥下障害」として診断がつく段階です。このレベルへの対応は、専門的な知識を有した医師、歯科医師、言語聴覚士などが対応します。

【オーラルフレイルへの対応】

 それぞれの段階で、対応を行う場についても、図4の下段に記してありますが、具体的に行うべき事柄についてご説明します。

「第 1 レベル 口の健康リテラシーの低下」の段階では、社会、人との繋がりを大切にしながら、日々お口の健康を守っていくことを心がけていくことが大事です。
新潟県の歯科保健医療計画では、県民の皆様の成人期から高齢期でのお口の健康守るための行動目標として、
・歯間部清掃用具(デンタルフロスや歯間ブラシ)を使用する
・定期的に歯科健診を受ける
・定期的に歯石除去や歯面清掃を歯科医院で受ける
・一口30回噛んで食べるように意識する
という項目が挙げられています。日頃からこれらのことを実践するよう心掛けることが大切なことです。

「第 2 レベル 口のささいなトラブル」の段階では、変化が些細なことから、自分で変化に気づく場合と、自分で気づかない場合もあると思われます。ここでしっかりと気づき、対策を立てることが重要です。図5aのようなことが気になる、あるいは図5bのセルフチェックを行なってみて、当てはまる場合には、この段階である可能性が高いです。

 
 【図5a】           【図5b】

 その場合、例えば、図6a〜cのような、お口の機能をトレーニングする方法が色々ありますので、このようなことを身につけ、習慣的に行う事がオーラルフレイルの進行を防ぐことに繋がります。また、市町村の介護予防事業で、さまざまな対応を教えてもらう事もできますので、そのような場に積極的に参加しましょう。そして勿論、「しっかりと噛める」事が基本となりますので、歯や歯ぐきを守るセルフケアも大切です。

 
      【図6a】            【図6b】


      【図6c】

「第 3 レベル 口の機能低下」の段階では、お口の機能の回復に、歯科医院での対応となります。しっかりと噛めるようになるために歯周病の治療を行い、また、歯がない部分に義歯等で歯を補う必要があります。最近では、お口の機能を評価する方法として、唾液量検査、咀嚼能力検査、舌圧検査等の口腔機能検査を歯科医院で行えるようになってきています。検査の結果、機能が低下している場合には機能を回復するためのリハビリ等も行われています。かかりつけの歯科医院でご相談されるのがよろしいと思います。

「第 4 レベル 食べる機能の障がい」の段階では、食べること、飲み込むことに支障が出ている段階ですので、専門家による対応が必要です。食べる事が困難なばかりではなく、食べ物等が肺に入ってしまい、肺炎を起こしてしまうリスクも高い状態となってしまいます。そのような場合には、専門的な診査、動画のレントゲン、内視鏡等による検査を行い、その方の症状に合った食事法の選択や、摂食嚥下リハビリテーション、食事の形態の工夫等を行います。脳卒中や変性疾患、頭頸部、胸部の手術後の方などで、食べる事が難しい場合には、担当の先生とよくご相談され、対応されるとよろしいと思います。

「お口は健康の入り口」と言われます。フレイル対策でも、外に出かけて人と楽しくお話をする、しっかり食べる、という事が入り口にであり、とても大切になります。お口の些細な変化を見逃さず、しっかりと対策を立てて、元気に過ごせるようにいたしましょう。


著者プロフィール                              

木戸 寿明 (きど としあき)
木戸歯科医院
新潟県歯科医師会 常務理事
新潟リハビリテーション大学 非常勤講師




プロフィール                         </p>
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