○阿賀に生きたい!
 先日、新潟のシネ・ウインドにて噂の新潟映画『阿賀に生きる』の10周年記念上映会に行って参りました。今まで観たい観たいと思いながら何度かの機会を逃し、今回ようやく観ることが出来ました。
 まずシネ・ウインドに入ってみてびっくり。平日の昼間というのにお客さんが多い!こんなのは『シュリ』以来。しかも年齢層が広い!見た目高校生くらいの女の子から、70代、80代のご老人まで。そして映画が始まり、冒頭の稲刈りシーンから・・・すると、私の前に座っていた老婦人が何やらカバンの中をゴソゴソ。眼鏡でも取り出すのかと思いきや、アルミホイルに包まれた丸い物体が。こ、これは!この形、この持ち方、紛れもなくオニギリでした。ここまで見てしまうと、中身が気になるのですが、間もなく周りに鮭の良い匂いがぷーんと。無難な梅干でないところが憎い!最近ポップコーンを食べる音がうるさい行儀の悪いカップルは居ても、映画館ではなかなかお目にかかれない風景と匂いでした。しかし、映画は基本的に『新潟水俣病』の未認定患者を追うというドキュメンタリー映画で、割と単調なこともあり、そのおばあさん、間もなくコックリコックリと。やはり正しい生活をしている昔の方は「暗い=夜=寝る」となってしまうのでしょう、仕方ないな〜、と思っていたのですが、スクリーンの中でおばちゃんたちが旦那さんをやりこめるシーンになってムックリ。男性陣の淡々とした話には反応しなかったのに、さすがと言えばさすがです。普段のご主人との生活ぶりが思いやられます。で、肝心の映画の中身ですが、『新潟の宝もん』と言われるだけあって、素晴らしい!撮影班と登場人物たちの信頼関係の築き方が素晴らしかったのでしょう、よくぞここまで映像化することが出来たと感心するほど、登場する農家や船大工の方たちの『土』に、いや正確には『川』に根ざした生活ぶりがよく伝わってきます。こんな人たちは日本ではもうとっくに絶滅したのではと思っていたのですが・・・決してスマートじゃない、派手じゃない、雄弁でもない、しかしその深く刻まれた皺と同じような彼らの『生き様』が、素敵でした。もしもビデオでも入手できたら、我が家の家宝としたいと思いました。
 そして映画館からの帰り、ちょっと遠回りして、阿賀野川沿いの道を走りました。新しい高速道路用の橋も完成し、この川の風景ももっと変わってゆくんだろうな、そんな想いで川を見ていたのですが、その時阿賀野川が私に語りかけました。「おらは何にも変わんね。変わってゆくのはおみしゃん(あなた)達ら」と。確かに阿賀野川は縄文の昔から我々の変わって行く姿を見続けてきたのでしょう。『新潟水俣病』もそんな歴史の1ページに過ぎないのかもしれません。春の日差しにまぶしいくらいキラキラと光る川面を見ながら、母なる阿賀野川に見守られながら生きてゆくのもなかなかのもんだ。そんなことを思ってしまった春の午後です。(2002年5月3日記載)
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