ボージャングルス氏に嫉妬した
 先日、今話題のジャズ・シンガー『綾戸智絵』を聴いてきました。彼女のコンサートは『アメイジング・グレース』で始まり、数々のお馴染みの曲をやり、コンサート後半に『ミスター・ボージャングルス』を歌ってくれたのですが、それは、それは、素敵なものでした。
 『ミスター・ボージャングルス』はカントリー・ロック歌手のジェリー・ジェフ・ウォーカーの作品で、ニティ・グリティ・ダート・バンドにより、1970年にミリオン・ヒットとなり、ロギンス&メッシーナ、サミー・デイビス・ジュニアなどによってカバーされた曲で、ニュー・オリンズの安酒場でお金にために踊り続ける老ダンサーを描いた、ちょっと悲哀に満ちた作品ですが、これは、名曲と言われるだけあって、歌い手によってだいぶ感じが違います。
 オリジナルのウォーカーのものは残念ながら聴いていませんが、ニティ・グリティ・ダート・バンドのものは、ボージャングルスという老人の姿をちょっと離れた所から淡々と語り、それによって彼の姿が浮かび上がらせるような作品で、サミー・デイビス・ジュニアのものは、酒に飲んだくれて、嘘か本当かわからないような自慢話をしながら、軽くステップを踏んでみせる、『もう一人のサミー』の姿がそこに見えてくる感じがするものです。そして、この日の綾戸智絵のものは、私には、ボージャングルスのおじさんと彼女がはしゃぎながら一緒に踊っている、そんな場面が見えてきて、しかも彼女があまりにも楽しそうなので、思わず私は嫉妬心から、サミーのような逆三角形顔のボージャングルス氏の肩をたたき「おっさん、いい加減にしろよ」などと耳元で言ってしまいそうな衝動に駆られるような感じだったのです。(ちなみに彼女のスタジオ録音のアルバム『ライフ』に入っているこの曲は結構淡々としていますが) この日の彼女の歌声からは「音楽を心から愛してる!歌うのが大好き!生きてるのって素晴らしい!」というような気持ちがガンガン伝わってきてしまったのです。コンサー ト終了後、小さなことに落ち込んだり、悩んだりすることが馬鹿らしくなって、「何だ!生きてるって結構素敵なことじゃん」なんて風に思えてきて、かなり元気になってしまう素敵なものでした。もしもお近くでコンサートがある時は是非行っててみてください、私も7月の東京のコンサートに、都合がつけば行こうかなと考えているところです。(2000年5月19日記載)
独り言の目次へ戻る