酒場物語 − とっておきのレシピ − 森の雫を一滴



     :
微笑む語部:単純にして究極の問題
     :命
     :生きること
     :食べること
嘲笑う語部:殺すモノと殺されるモノさ
     :
微笑む語部:食は、人の裕福を計る一つの基準
     :心が満たされようとも
     :食べなくては心も枯れる
嘲笑う語部:腹が減るとイライラする
     :
微笑む語部:人は、飢餓という地獄の中では
     :心は枯れ果て、容易に鬼畜へと変貌する
嘲笑う語部:人が人を喰らう。本能なのか?生きるという意思なのか?
     :
微笑む語部:それは、心を満たすモノも食べることであるかのよう・・・
嘲笑う語部:力で本能を押さえ込んでるんじゃないの?
     :腹が減ったから力が出ない
     :
微笑む語部:生きる為には食べなくてはならない
     :ならば、食べるという事は、命を食べる事
     :命を食べるからこそ生命をつなぐ事が出来る
嘲笑う語部:精神論だね。もっと科学的にいこうよ
     :
微笑む語部:気が遠くなるなるほどの太古から続く命の輪
     :そんな命の輪を輝かせるモノ達
     :命を次なる命へ渡す技術
     :料理
     :その料理を極める者が料理人
嘲笑う語部:いやしいだけさ
     :
微笑む語部:命の力を、命の輝きを最大限に引き出し
     :命の全てを次なる命へ引き渡す
     :そして、命以外の『 美味しい 』を加える
嘲笑う語部:そう、『 美味しい 』が欲しいだけさ
微笑む語部:もう、黙って頂けますか?
嘲笑う語部:あらら。邪魔者は消えますかな
     :
微笑む語部:単純にして究極の問題
     :それらに向かい合い
     :一つの答えを出す者
     :料理人
     :
微笑む語部:その答えを綴った
     :『 とっておきのレシピ 』
     :それは、フラムという料理人の物語でもある
     :
微笑む語部:とっておき
     :取って置き
     :いつまでも、大事に取って置きたいレシピ
     :それは、フラムという料理人の想いでもある
     :
     :
   語部:暗く冷たい森
     :雨さえも降り出した
     :雨は、枝葉を滑り落ち地面を目指す
     :空、木々と地面の間に小さな子供が独り
     :雨もその子を避ける事が出来ないので濡らしてしまう
     :小さな子供は泣く事にも疲れたのか、黙って雨に濡れていた
     :生きる事にも疲れてしまったのだろうか・・・
     :大きな樹の幹の下にへたり込み、小さくうずくまる
     :雨に濡れる事はなくなったが、今度は寒さに凍える事になる
     :
 小さな子:「 おなか・・・すいたなぁ 」
     :
   語部:薄れ行く意識の中、思い浮かび、口を動かした言葉がそれであった
     :何処で、何を食べる事を、その子は望んだのだろうか
     :
   誰か:「 お腹が空きましたか? 」
   語部:小さな子は、いつの間にやら毛布にくるまって女性の膝の上で寝ていた
 小さな子:「 ・・・ 」
   語部:小さな子は、返事する事無く・・・
    ?:『 グゥゥゥ〜 』
   語部:お腹で返事をした
   女性:「 さぁ、帰りましょう、あなたの家へ 」
 小さな子:「 帰れないの 」
   女性:「 道が分らないのね?大丈夫、フリアーシュが居るから 」
    馬:「 ・・・ 」
   語部:何時からそこに居たのか分らない
     :女性の言葉に合わせて現れたかのような印象を受ける
     :フリアーシュと呼ばれた馬は、静かに小さな子を見つめている
 小さな子:「 ・・・私、帰っちゃダメなの 」
   女性:「 ・・・ 」( まさか、口減らし・・・ )
   語部:怒られた子供になら慰めの言葉もあるだろうが
     :口減らしの為に捨てられた子供に掛ける言葉は見つからなかった
     :実際、巷の噂を耳していた女性
     :不作により売られるか捨てられる子供達の噂
 小さな子:「 私がいたら、フィノンが連れて行かれるの 」
     :「 だから、私は、帰っちゃダメなの 」
   女性:「 フィノンは、あなたの・・・ 」
 小さな子:「 お姉ちゃん 」
   語部:年上の方が食べる
     :年上の方が働く
     :年上の方が、何かと高く売れる
     :そんなところだろうか・・・
   女性:( 姉を助ける為に、この深い森へ踏み込んだというのですか・・・ )
     :( 大人でさえ躊躇するこの森へと )
   女性:「 どうして、この森に? 」
 小さな子:「 森なら木の実や果物があるでしょう? 」
     :「 私だけなら、なんとかなるかなって 」
     :「 でも、全然みつかんない。リスの方が探すの上手みたい 」
   女性:( あなたは、森へと逃げ込んだのではありませんね )
     :( あなたは、生きる事、戦う事を選んだのですね )
     :( あなたは、ただ、生きる術を知らなかっただけ )
   女性:「 ならば、あなたに道を示しましょう 」
     :「 生きるという、生きていくという道を 」
 小さな子:「 ・・・? 」
     :「 お姉さんって? 」
   女性:( 良かった・・・おばさんじゃなくて )
   女性:「 私は、狩場の騎士 」
     :「 森にて、道を示す者 」
 小さな子:「 騎士さま? 」
   女性:「 ええ 」
     :「 騎士とは、剣を持たぬモノの剣 」
     :「 盾を持たぬモノの盾 」
     :「 あなたがイバラの道を歩むのならば 」
     :「 全てのイバラを切り裂いてあげましょう 」
     :「 あなたが、自らの手でイバラを切り裂くというのなら 」
     :「 切り裂く術を示してあげましょう 」
     :
   女性:「 さぁ、行きましょう 」
     :「 あなたのツルギを輝かせに 」


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