飯豊連峰 門内岳避難小屋小屋番日記


7月上旬から8月末まで胎内市の管轄の門内岳避難小屋、頼母木山避難小屋は管理人が入り、常駐管理期間となる。今年はお盆休み期間中の12日~17日までボクの担当となりました。
ま~門内小屋までのコースタイムなんぞ。面白くもなんともないので、割愛。で、ざっくりとした小屋番日記というか、自分のための備忘録的な書き散らし・・・・


8月12日(水
AM02:40天狗平P発、08:45門内岳避難小屋着。それにしても、今回も重かった・・・


本当に今年の雪渓はキレイだ・・・・



天候は、曇りから霧雨で気温は15℃。寒い。梶川峰で頬をブヨに食われて痒い。痒いばかりではなく、腫れて顔が変形している。
前任の矢沢氏、10時頃下山。
テント2P、小屋1名が13時頃までに入る。予報とは異なり、ガスが濃く、風も強い。

アマ無線の144Mhz帯のメインチャンネルで遊んでいる馬鹿者が居てうるさいので、電源を切る。
ラジオを聞いていると、新潟市に大雨洪水警報が出て、豊栄辺りで白新線のアンダーパスで車が水没した様だ。何だか荒れ模様のお盆休みだなぁ

今朝、ブヨに食われた頬が腫れて顔が変形している。アレグラを持ってくればよかった。
16時気温13℃風雨強く寒い。17時を過ぎると雨は止んで天候は回復してきたけれど、風は相変わらず強い。



今年はトリカブトの草丈が短い代わりに花がとても多い

今年は花の進みが早くて花のシーズンとしてはもはや終盤の終わりって感じで消化試合の様相で元気がいいのは、トリカブトくらい。

夕食カレーライス。
小屋泊まり6名、テント7張り12名様のご利用。
せっかく月のない夜なのに、薄雲が取れないのと、風が強く寒くて星を観ていられない・・・・
20時30分就寝



8月13日(木)
04:00起床。新発田の街の灯りは見えるものの、外に出ると星は見えずに霧雨があたる。気温は12℃。
就寝時にガタガタ音をたてて、吹いていた風は収まっている。
昨日の天気予報では、日中は持ちそうな予報だったがどうなるやら・・・・

昨日ブヨに刺された顔は腫れたままだ。チクショウ・・・・
シュラフは持ってこなかったので、毛布を3枚被ってダウンを着たまま寝たが寒かった。

昨晩、門内で宿泊した登山者の何人かは今日、御西までの行程なのだが、荒れないといいな。
ラジオの天気予報は、人が住んでいる場所を対象としているので、ヤマにいると、ネットが繋がる環境であれば本当は助かる。
ホント、ネットが繋がらないと、天気予報の元になる資料が何も観ることができないので、ツライ・・・・短波ラジオに白地図かな・・・

ご来光が望めたと思ったら雨が当たってきた。こりゃ、早々に雪渓から冷却用の雪を取りに行った方がよさそうだ・・・・
雪を採りに行くと、ブヨの猛攻に遭う。カッパと軍手の隙間から齧ってくる。
小屋に戻るとザ~っと来た。お~ヨカタヨカタ
大濡れせずに済んだ。こんなどってことがない事が嬉しいのよん。



蔵王からのご来光・・・でも、このあと直ぐにお天気は崩れた。


門内清水は出たばかりなのに、既に細い。例年冷却用の雪を取る、門内清水の下の雪渓の雪も小さい。数日うちにかなり小さくなると思う。
今年は、雪解けが早かったうえに、ここ2週間ほどほとんど雨がないので、山体に含まれる水量が少ないだろうから清水は細くなるのも当然か・・・・

冷却用の雪が直近に迫った問題で、そのすぐ後に清水、水場の問題が生じそうだ。このあたりが秋季管理の問題になりそう。
女性用WCは毎年なのだが、ペダルを回していただく回数が少ないためか、女性用のWCに臭気が出やすい。.
なので、WC清掃の際には女性用WCのペダルを5分ほど回す。運動不足に陥りがちな小屋番的トレーニング(笑
そうやって、ペダルを回していても、ブヨが寄ってくる・・・・こんなに稜線にブヨが多い年は多分初めてだと思う・・・・

小雨が降ってきたので、天水タンクの受水状況を点検。雨トヨの勾配も大丈夫。タンクに耳を当てると、ジョボジョボ音が聞こえる。
天気が悪いので、早々に行動を切り上げるパーティーも・・・・
昼前にテント1張3名、小屋1名の宿泊者
昼食はラーメンライス。ラーメンはマイブームのトムヤムクンラーメン。これが酸っぱ辛くて温まる。
携帯のメールをCKすると、土曜日にリョウちゃんが上がってきてくれるようだ。
それにしても、お盆休みだというのに静かな稜線だ。ヒマだぁ・・・
お客様が来なくても、お天気が良ければ外作業を探して何かとすることもあるのだが、雨降りではそれもままならない・・・・

昨日、今日と小屋泊まりとテント泊の人数を観ると、テント泊の方が多い。テントの自由度、プライベートな空間が今の若い人たちに合っているのだろうか?
勿論、テント、テント廻りの道具のスペックが上がり、軽量化されているのも大きいと思うのだが、お一人様テントも増えているので、天場が狭い・・・と、いう状況が生まれている。
環境インパクトではテントより小屋を利用して頂いた方が良いのかもしれないが・・・・雑誌、ヤマ道具屋さんのプレゼンがいいのだろうか?

夕方、梅花皮のOTJに状況を聞くと、梅花皮は30人程の宿泊とのこと。御西も数名・・・そこに溜まっていたのか・・・・
今日は、ペルテウス座流星群の極大とされているけれど、天気が悪く見えそうもない。月も新月近くで暗い夜なので残念至極。
夕食は、五目御飯に缶詰。ヤマにいると、どうも腹が空く。下山すると太っていると思う。
眠いけれどまだ、20時。もう30分頑張って起きていよう。あまり早い時間に寝ると、妙な時間に目が覚めるのも辛い・・・・



8月14日(金)
頑張って30分起きていたものの結局、WCに0時30分頃に目が覚める・・・・
外に出ると、南西方向の空で盛んに発雷している。気温15℃でかなり強い湿気を感じる。熱雷のような局地的な対流型ではなく、強い暖湿気と
乾燥冷涼なタイプの異なる空気の接触によるものでは大雨の心配がある。

ラジオを聞いているとNHKラジオ深夜便でエルビス・プレスリーを流すらしい。イイね~。外から風雨の音が聞こえる。
AM04:30起床。気温14℃天気ガス昨晩は多少の降水があったようで、天水タンクは1/4程度の貯水・・・・まだ安心して使える量ではない。

天気もパッとしないので、登山者の行動も緩慢。作業の段取りを変更するっかな・・・・
AED確認・・・門内のAEDは蓋をあけると、電源が入るタイプ。





そして、これが、今回携行したボクなりのファーストエイドキット


上中央 サムスプリント×2枚
上左  体温計
中左  傷用パット(大判)
中中央 傷ばんそうこう2サイズ・ロキソニン・下痢止め・テーピングテープ、はさみ
下左   小さい穴を開けたペットボトルキャップ(洗浄用) ベトネベート軟膏(虫刺され用ステロイド軟こう)メモ用紙、ボールペン・棘抜き、爪切り

これを5Lのスタッフバックに入れて携行




ところで、門内、頼母木の小屋の管理を胎内市から受託している、『飯豊・胎内の会』この団体にボクも所属して交代管理人として参加している。
小屋番の主食材などは例年6月半ばにヘリで荷揚げしている。6月時点ではボクは、未だ下越山岳会に在籍していたので、他の下越山岳会のメンバーで小屋管理に
入る方と共同で主食材の購入をお願いしていました。
今回、入山前に、『飯豊・胎内の会』の事務局の亀山氏から、頼母木はガスが不足しているが門内は上手に使っているせいか、まだ余裕があると言われた。

ところが、共同食材を改めると、ボクより前の小屋番さんは、ほとんどパックライスを食べておらず、インスタントラーメンだけが多量に消費されていたので、これが
ガスの低燃費の理由かと納得した。その他、柿ピーの様な、乾きモノが全くなく、缶詰が大量に余っていた。

そうすると、みなさん、インスタントラーメンと柿ピーポリポリって感じなのだろうか。
時間のある小屋番生活。ご飯くらい少し手を加えたいと思うのはボクの考え方なのかな?
出発前日VXTから電話で上にはラーメンがないと聞かされる。

ボクは当初からラーメンは持ち上がる予定でいたので問題はなかった。
ただ、乾きモノのツマミが全くないのは、想定外。

ただ、これもまだ、膨らませる前のポップコーン、サラミ、素焼きのナッツを持ってきたので凌げた。


出来立てはなかなか、おいしいよ。


リョウちゃんからメールで明日、酒飲みに上がってきてくれるとのこと。
力持ちのリョウちゃんのことだから、生モノを大量に持ってきてくれるだろう。

頼母木小屋の石川氏から電話があり、ロング缶のビールが欠乏してきたので後刻取りに来たいとのこと。
新発田の高沢氏来月の連休の時に使いたいデポ品の件で相談に来られる。

水場点検。水が既に細いので、少し下におろすことを考え、地形を整える。
そして、今朝、門内清水直下の雪渓は中央部が末端まで割れた、あと数日が限度だろう。
その下の安定した雪渓は足場の悪いルンゼを50m以上降る感じだ。

WCの帰り、本棟に寄ると、北股岳山頂で誤って、オウインノ尾根に降ってしまい2時間30分ロスしたという方が居た。
ピークでは分岐になることがあるので気を付けて欲しい。

昼食は、ラーメンライス
ボクの後の小屋番の高桑さんへ差し入れを持参されたヤマケイ社の女性2人
雨が酷いのだが、できれば、梅皮花小屋までへ行きたいのだが。。。。
と言うので、少し休憩して様子を見たら?と答えた。
ヤマケイ女子が出かけた後、再び雨が強まる。

15:20を過ぎて、疲労困憊したずぶ濡れのおとっつあん到着。かなり疲れている様子。
御西のAXLと無線交信。御西も静かな様子。
でも、明日、御西から門内向けのお客様が何人かいるらしい。ヨシヨシ・・・

17時過ぎ、飯豊朝日山岳遭難救助隊々長の政信くん(EHJ)から電話。
明日の朝、05:30着で梅花皮小屋に手伝いに向かって欲しいとのこと。

概ねの予想される作業は、梅花皮小屋に居る胸の痛みを訴える病人を梅花皮小屋番のOTJと御西小屋番のAXLと
一緒に中ノ島或は北股沢出合まで介助しながら下山して、ヘリに引き渡す引き渡す段取りの様だ。
気になる胸の痛みは、諸症状を医師に電話で伝えたところおそらく、肺炎であろうとのこと。
電話を切ると、『飯豊・胎内の会』事務局の亀山氏から電話、小国側からの要請あり、笹川の判断に委ねるとのことだが、EHJ返事した旨お伝えし
亀山氏に丁度、その件で電話するところだった旨お話しすると、胎内市側にも連絡を既に入れて頂いたようである。

急性の心疾患でなく、肺炎であれば、AEDを持ってこれから、出動の夜行便を出すこともないので明朝対応。丁度眠いので、いい塩梅だ。
最低限の荷物に、ファーストエイドキットと無線機だけサブザックに突っ込んで就寝




8月15日(土)・・・・・
気分の悪くなる方がいるかもしれないので、注意してね・・・・・

早寝したので、02:00頃にパカッと眼が覚める。ラーメンを食べて、ボンヤリ・・・・
ウトウトしてくる。・・・・ヤバイ
こりゃサッサと出かけよう。梅花皮で寝こけても叱られないだろうから、サッサとでかけることに・・
03:30分前に出発。漆黒の闇。新月、濃霧。強風の暗闇。
どこを歩いているのか明らかに判然とせず、判らない所が随所にある。
まあ、夏道だから歩けるって世界。

04:30梅花皮小屋着。
小屋番のOTJから概略、病状を聞く。御西からのAXLが到着してから段取りを相談することにした。
コーヒーを頂きながら、昨晩は39℃台まで発熱、意識障害が出たらしくうわ言を言っていたと聞く。
しかし、今朝は37℃台まで下がっているという。

OTJは樽口峠にベースを構える警察隊のPWDと無線交信が忙しい。警察ヘリは、鳥海山の捜索事案があり、梅花皮には防災ヘリが予定されており
5時に山形空港を出る予定だが、天候に問題がないではない。らしい・・・
ちなみに、梅花皮小屋付近は20m前後だが、下界、樽口峠は晴天でクリアらしい。
まず、2階にいる要救を1階に降ろすことが必要である。

5時頃、要救の様子を観に行く。ボクの顔が誰の顔か判らない様でじっと凝視している。
隣の小屋の管理人でキミの介助に来たんだよ。頑張りましょうね。と伝える。
んで、要救の様子の概略

① 暑いのか、下は下着のみで、ズボンは脱いでいた。
② 意識状態は異常(正常に受答えする時もあるが、もう言もあり。正常ではない=異常と判断)
③ 呼気に生くさい様な、嫌な臭気がある。かなり明確な臭気で普通ではない印象。
④ 排尿回数については、全然出ていないとのことなので、水分補給を指示。もしかすると、介助なしでWCに行けないので、水分を採らない様にしていたのかもしれない。
⑤ 体位の変換も大変=介助なしで体位を変えられない。とてもじゃないが、自力歩行は無理
⑥ 体位は座位で保とうとしたが、滑ってしまいずり落ちて安定的に保てない状態。
⑦ ヘリによる救助搬送は急を要するレベルとシロウトながらそう思う。

確かに肺炎という事前情報のとおりの様だが全身状態が非常に悪い。
AXLの到着を待って相談するにしてもどうも、当初の目論見とおりとはいかない様だ。

AXL到着後、要救の状態を観察。AXLも自力歩行は無理だろうと考えた様で、OTJ、AXL、自分の3人衆議一致で下山は無理で天候回復を待ち
ヘリの到着を待つ意外方法がないと。結論づけた。天候回復と要救の体力の時間の戦い。でも、この後、これ程急速に悪化するとは、思わなかったし
要救は助かるものと思っていた。
天候回復すると、ヘリが飛んでくるので、とりあえず2階から1階に降ろすが、自力歩行ができないので、3人で肩、脚を持って階下に降ろす。

その後、WCに行きたいと云うので、介助するが、這うことも出来ない。OTJ、AXLと三人で抱きかかえてWCブースに連れていく。
用足し後、再び休んでいる場所に戻すが、呼吸が非常に苦しい様で、肩、腹部が速く、大きく動いている・・・・相当にヤバイよね・・・・
WCに行くだけで苦しいのだから、ヘリの到着が一刻も早くなるように天候の回復を祈る。

樽口峠に居るPWDからの情報では、稜線部だけがガスに包まれているとのこと。
この段階で、出来ることは、ABCDEを繰り返して経過観察し、急変に備えること以外何もできることはない。
呼吸は苦しそうで、腹部、肩が大きく早く動いて脈拍も昨晩から変わらず110~120位で推移。この標高(1,850m)で安静にしている割りには早すぎる。

小まめに、頻繁に管理棟と1階に移した要救との間を行き来して様子を観察していた。
6時を過ぎた頃、うわ言で、『製品番号は?』と何度も聞いてくる。何か仕事のことなのだろう。声掛けしても、何かうわの空で朦朧としている。
熱が下がっているのに、うわ言を云うのは相当に全身状態が悪いのだろう。早くヘリが来てほしい。一刻も早く医療機関に搬送しないとかなり危険水域だろうと
シロウトながら思う・・・・・痰、吐しゃ物が口腔内を塞ぐ可能性、意識低下での舌根沈下を避けるために体位は回復体位として安静を保ち
仰向けにならないように、背中側にザックなどの荷物をあてがっておく。間隔を短く観察&ABCDEの手順で経過を観察していた。

06:30分過ぎに状態を観察するため要救の所に行くと、ザック等がずれて仰向けに寝ている。様子が変で、名前を呼ぶが応えない。
急変したと、OTJ、AXLに伝える。OTJは無線で急変を樽口峠に通知。AXLとボクは声掛け、刺激を与えるが反応が非常に悪い。
呼吸が間欠的になり、死戦期呼吸と思われる下顎を動かす呼吸が僅かに観られた、橈骨での脈が採れないとAXL・・・
ボクが頸部動脈で脈を診るが判らない。口と鼻から薄い血液の混じった泡状の液体が出てきた。
顔を横に向けて、泡を出して、口腔内の異物の有無を確認。

06:35分、CPAと判断して、CPR開始。なお、感染症が疑われ口腔内から流れ出る液体に血液も含まれているので救助者側のリスクを考えると
人工呼吸は躊躇われ施術していない。
胸骨を圧迫すると、ゴポッ、ゴポッ、ゴポッと云う変な音が胸部から聞こえてくる・・・・
3人で胸骨圧迫を続けながら、呼びかけ、刺激を与えるけれど反応がない。

OTJが樽口峠のPWDと対応協議。05:00に地上班が堰堤を出発している。天候が悪くヘリは飛べていない。
07:00足先が冷たくなってきたけれど、胸骨圧迫を続けているので、体温は35.7℃の割りには首辺りは暖かい。
頑張るしかない。

07:35、1時間経過。四肢末端の変色、顔色が悪くなり始める。
時々、血液交じりの泡が流れる。その都度、顔を横に向けて口腔内から流しだす。厳しい。

08:00体温、35.2℃誰も、CPR終了の判断はできない・・・現場判断ということか・・・・
08:15体温、35.0℃となる。3人で残念だが仕方ない。という判断。

要救の荷物をザックに詰めて、カッパを着せて、レスキューハーネスを装着
OTJが樽口峠に連絡、地上班は北股沢出合付近にTOPのEHJ、LFDが来ている様だ。LFDの頑張りというか体調が良い様で早い・・・・

08:55要救をまずはAXLが背負い梅花皮小屋を後に下山開始。足場が悪く後ろからロープで確保しながらの下山。
要救の体躯が大きく重い。72キロ位あるとのこと。



草付広場を降りトラバース地点まで降りると、EHJ、LFD、隆蔵くんが登ってきた。助かった。要救の体躯が大きく重く
3人では、既にもてあまし気味だった。

続々と地上班が登って来る。おや、隆蔵くんの長男、拓くんも上がってきたのか。
20歳の若き救助隊員が育っている。何だ、小学生だったのがもう、20歳なのか・・・
コッチも歳をとるワケだ・・・・


後ろから、隆蔵くん、AXL、要救を背負い降るLFD、先導するEHJ


黒滝付近は悪場で、ルート取りが難しい。
隆蔵くん、LFD、AXL、OTJは場数を踏んでいるので、安定して降る上手いものだ。
本来は、個人山行で御西を目指していた、シミケンさんも朝の対応で救助隊に編入されて合流。

10:35北股沢出合。
まだ、ヘリは来ない。なんでも長井市付近に雷雲があり小国側に進入できないらしい。
とりあえず、安定した雪渓に乗ったので、小屋番3名は通常業務に戻るためにここから、梅皮花小屋へ戻ることに。


空は明るいが、驟雨が時折激しく降る悪条件  北股沢出合で休憩



小屋番3人はOTJお手製の炊き込みご飯のお握りの軽食を採って登り返す。

とうとう、稜線のガスは取れることがなかった。

梅花皮小屋で、お清めの塩を振り、お神酒を一口だけ含んで各々の小屋に戻って行く。

北股岳登りの途中でヘリの音が下の方で聞こえた。この時間じゃ、ホン石出合付近ではなく、雪渓末端付近かな?等と思いながら北股岳山頂。

12:30 風雨でずぶ濡れになりながら、門内小屋に戻る。着替えてザッとWC掃除して、水場の確認だけやってヤレヤレと思っていると、大きな荷物でリョウちゃんが到着。
『飯豊胎内の会』事務局の亀山さん作業内容、小屋に戻った旨の報告の電話入れて、リョウちゃんと事の次第を話す。

19時過ぎにEHJから電話があり、死因はやはり肺炎だったとのこと。
心停止しても、肺が機能しない以上、胸骨圧迫しても、門内からAEDを携行していっても助命することはできなかったのではないか?そう思っている。

前日天候がよく、その時点でヘリ搬送が可能であれば、医療施設で適切な治療を受けることができていれば、落命することもなかったのかもしれない。
いや、それ以前に体調が良くなかったハズで、入山時点、あるいは初日の行程で判断できれば良かっただろうに。

天候という運が最後まで味方してくれなかった。
合掌。


夕方近くになり雨も上がり稜線に静寂が訪れた・・・なんてこったい。


こんな日でも、同じように陽が暮れる



8月16日(日)
05:00起床・・・・
大酒喰らって何時頃に沈没したのか記憶がない。
リョウちゃんが担ぎ上げた、一升瓶は空。他にも酒類が転がっているのでかなり飲んだ様子。
陽の光で昨日の濡れモノを乾かす。




スゴイバッテリーをソーラーパネルで充電。
リョウちゃんが下山していくと、明日は交代の高桑氏が上がってきて、ボクの小屋番は終了である。

通常の作業をこなして横になる。昨日の疲れが残っている。
昼前にリョウちゃんは下山していった。
夕方前に頼母木小屋から高桑氏より、頼母木小屋に入ったので予定通りに明日の交代とのこと。

夕食を食べてウトウトしていると、亀山氏から電話があり、二王子岳、七滝沢で滑落死亡事故発生の連絡。
ランタン会のメンバーさんらしい。ランタン会には特に付き合いのある方はいらっしゃらないのでどなたなのかは心当たりなし。
20:30就寝



8月17日(月
03:45起床
今日は交代日。天気は小雨・・・・
何だか終日、カラリと晴れた日は無かったな。
明るくなったら、食料品の残量の確認をしよう。

朝食を食べて、小屋・WCの清掃だけ簡単に行い(ここ数日ほとんど宿泊者が居ないので、小屋もWCも大して汚れない。それほどお客が少なかった)
小屋に、一斗缶を運び込んで全量出して確認して書き出す・・・・ご飯類沢山残っているな~
再び石室に収めて、今度は自分のザックのパッキング。

高桑氏到着。ロクな引継ぎもしないで、四方山話に花が咲く。
下山後、思いだして、電話で引き継ぎ事項の不足分をお伝えする体たらく・・・

11:36門内小屋を後にして、下山開始。稜線部少し風があるけれど、支障があるほどではない。
もう、花もオシマイ。元々それ程花は多くない梶川尾根。急がないけれど気温が低めなので休まないで降る。
湯沢峰でカッパを脱いで下山を続けて、空腹で我慢できずに、楢ノ木曲りで食事。

14:36計った様に3時間丁度で、駐車場に着いた。
天狗平ロッジに顔を出して、管理人の小関さんに挨拶して、ワイパーに挟んであった飯豊山荘の入浴券。
EHJが気を使って挟めておいてくれたものだ。

ありがたく、入浴させて頂き、トマトジュースを2本一気に飲んで、帰途についた。




飯豊の短い夏山はあっという間に過ぎ去り、また厳しい季節が訪れる。


※ 追記  2015年08月22日
15日急変した要救については、肺炎を重症化させてしまい、肺水腫に陥ったのではないだろうか。
心臓病由来の肺水腫であればそもそも、弥平四郎登山口から梅皮花小屋までたどり着けないだろうし、おそらく入山時から風邪様の体調不良は
あったのではないだろうか?

知人の医師から聞いた話では、抗生物質使われる前は、肺炎は恐ろしいもので重症化すれば助からない病気であったし、現在でも高齢者など、体力的に弱った方に
とっては危険であることに変わりなく怖いものだと聞いた。長引く咳、微熱等いつもの風邪と少し違うな?という時は用心した方が良いとのことだった。

考えて観れば、山中にあっては、抗生物質が使われる時代以前の環境下と変わらないのであるので、体調の異変には十分注意したい。
ボク自身、肺炎なんて、抗生剤で良くなる病気なんだろう。そういう誤った認識をもっていた。
自宅で生活している環境であれば、適切に充分な医療を受けることが可能であるが、ヤマでは、抗生剤を使う以前の時代環境と同じであるので
気を付けたい。






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