八ヶ岳 横岳(2,825m) 石尊稜

平成25年03月16日(土)〜17日(日)

 外国からの人達3人で平坦地で雪洞を掘っていた。  雪洞の上に上がらない様に彼らが雪上に置いた枝。
   
初キャンディ  3日後には、骨折箇所のプレートを外す手術・・・akiちゃん
   
 赤岳鉱泉の夕食。食事が美味しいことで知られています。  最初の分岐を右へ。左は小同心ルンゼへ。
   
 左、三叉峰ルンゼ・・・この分岐も右へ  先行する姉ちゃん、この分岐末端の左側から尾根に上がる
   
 下部岩壁見た目より悪い:中間に先行P  akiちゃん撮影  取付は狭くて不安定   akiちゃん撮影
   
 下部岩壁は中間で一度切った  akiちゃん撮影  灌木帯で後続Pを待って先行して貰った  akiちゃん撮影
   
 下部岩壁の上、草付の灌木帯をリードしてみる姉ちゃん Wアックスが気持ちよく決まる条件でした 
   
 中間部の雪稜はコンテで登ります 気持のいい雪稜を進み上部岩壁へ  akiちゃん撮影
   
 登ってきた雪稜が美しい 上部岩壁を抜けた。後はガレ場を登って稜線へ  akiちゃん撮影 
   
 稜線に抜けた充実感が素晴らしいですね・右奥に富士山  地蔵尾根を下山・・・地蔵二体  akiちゃん撮影
   



日  時     平成25年03月16日(土)〜17日(日)
参加者     姉崎さん(以下、姉ちゃん)、 影山さん(以下akiちゃん)以上、新潟山岳会。
LTQ(下越山岳会)
行き先     八ヶ岳  横岳 石尊稜
天 候      16日(土)快晴 17日(日)
装 備     冬山営業小屋泊基本装備+登攀用品(ロープはキャンディ用にシングルロープも追加・・・Φ8.5W×2本・Φ10.3×1本)
通信用具   無し
ナビ用品   地図 コンパス 

防寒具    冬ジャケット
その他     ストック
飲み物    水 1L
食料品    握り飯(初日行動食)調理パン
その他    

コースタイム 事柄 備考
03月16日
05:00 新潟発  晴天
10:04 美濃戸口発(1,500m)
11:24 美濃戸山荘(1,715m) 美濃戸口〜美濃戸までの林道が氷化してクランポンの脱着を繰り返した
12:24 堰堤広場(1,950m)   いや〜歩き難い・・・・・
13:40 赤岳鉱泉着(2,220m) 受付後、16:15迄キャンディで遊ぶ
17:20 夕食
21:00 消灯

03月17日
04:00 起床 自炊室で簡単に朝食・鉱泉に登攀不要物をデポ
05:20 赤岳鉱泉発
05:43 登山道から外れる
05:55 小同心ルンゼ分岐
06:17 石尊稜末端尾根下でクランポン登攀具を着ける。下部岩壁中間部に先行P(遠藤ガイド2パーティ)
06:45 登攀開始
07:55 下部岩壁を抜けて、急な草付の灌木帯へ 数ピッチ悪い所を登ってからロープをシングルにして姉ちゃんもリードしてみる。
10:40 雪稜へ・・・灌木帯で4パーティー程ルートを譲るが、どうかするとボク達より遅いパーティーもいて無用に待ち時間を長くしてしまった。
13:15 上部岩壁抜ける・・・・取付でかなりの待ち時間・・・(-_-)
13:20 稜線に抜けると富士山が出迎えてくれた。時間がかかり過ぎたけれどお天気に恵まれ気持の良い登攀ができた。
13:30 軽食を食べて石尊峰を後にする
14:13 地蔵尾根分岐
15:20 赤岳鉱泉着(2,220m)
15:52 赤岳鉱泉発
16:23 堰堤広場(1,950m)
17:00 美濃戸山荘(1,715m)
17:48 美濃戸口着(1,500m)   下山後、樅の湯でユックリ、まったり〜
19:30 南諏訪IC
22:50 新潟着 解散


概要
3月のとある日、夜クライミングに行くと姉ちゃんが、ヤツに行きませんか?と云う。

何処へ?と聞けば、石尊稜とのこと。今シーズン初めてアイゼンクライミングで阿弥陀岳北稜に登り、翌月、赤岳主稜と再度
阿弥陀岳北稜を登りノリノリなのだ。
3月も半ばでそろそろ冬期のヤツもオシマイだから行くか・・・という流れで3人で石尊稜を目指しましたとさ。


記録
3月16日(土)
朝、5時に集合出発。徐々に明るくなる。今日も良いお天気。車は順調に諏訪ICへ。
本当は諏訪南ICが最短なのだが、諏訪ICの方が道中コンビニが数か所あり行動食を買う都合ボクのワガママで諏訪ICで降りた。

美濃戸口の駐車場に車を停める。今週も凄い車の数。先週、赤岳鉱泉のイベントがあったので今週は空くべ。そう思うのが田舎者の浅はかさ。
今日は赤岳鉱泉のアイスキャンディで、アイスクライミングの練習・・・なので、シングルロープも持参。それと明日の登攀用のダブルロープも
持ってきたのでロープ3本。それと、明朝の朝は早出のため、ご飯は小屋のご飯を食べないで出かけるので朝用、行動食用のパン類で嵩張った。

歩き始めると直ぐに道路が青氷。寒暖の差が大きい様で融けて凍るを繰り返して氷化したようで、とても最初の下りは靴で歩けたものではなく、渋々
クランポン(アイゼン)を着ける
。下りきって橋を渡った所で、クランポンを外す。
そうすると、イエティの遠藤ガイド車、石関ガイド車が進む。続いて水野ガイド車も進んでいく。
毎年、ここを歩く時だけは、四駆が欲しいと思う。クランポンを着けたり外したりと無駄な時間を費やす・・・・くそ〜〜〜
ひーひー言いながら美濃戸。

美濃戸で一休みして先に進む。堰堤広場。暑い。
少し先に進んで考えた。ここから先はあまり融けないから氷になる場所は少なくなるかな。
そして、クランポンを外した。やはり、クランポンを外すと楽になるし歩行スピードも上がる。

そんなこんなで、赤岳鉱泉着。
既に遠藤ガイドは講習中、赤岳鉱泉玄関前で、福田ガイド、石関ガイドが講習準備中。
早速、受付を行い、荷物を部屋前に置いて、キャンディへ。

ボクの頭の中では、今日アイスクライミングをしたかったのは、翌日の石尊稜はWアックスで凍った急な草付を登るということなので
狙った所にアックスを叩き込むイメージを掴んで欲しかったのです。
氷の窪みにアックスを引っかけて登る方法もありますが、基本的には狙った所に正確にアックスを刺すということが大切なので引っかけないで
刺して登って貰いました。

イエティの遠藤ガイドさんとお話。
遠藤さんパーティーも石尊稜とのこと。下部岩壁のルート取りについてアドバイスを頂く。有難いです。

小屋の夕食は、姉ちゃん期待のステーキではなく、豚しゃぶ&ホッケの焼き魚。
一端は、ガッカリした姉ちゃんだけど、豚しゃぶ、大ぶりのホッケに大満足。
楽しく食事を頂いて21時就寝


3月17日(日)
4時起床で準備をして自炊室までも寝床になっているので、食堂の一部、談話室が自炊場所となる。
準備して、不要物を大型ザックにデポしてヘッデンを点けて出発する。

行者小屋に向かう登山道を辿り、最初の小さな橋を渡ったところで登山道を外れて沢沿いに進む。
そろそろ、ヘッデンは要らないね。
沢を進んで行くと二股に分かれる。左は小同心ルンゼ。右に進む。
少し藪のあるものの、今日のトレースに導かれる。遠藤ガイドパーティのトレースと思われる。
暫く進むと、また二股になる。左、三叉峰ルンゼ、右、日ノ岳ルンゼ。
日ノ岳ルンゼ側に廻り、尾根の末端を目指す。
斜面が急になる手前で、登攀具を着けて急な雪面を登る。
下部岩壁の中頃に先行パーティーの姿が確認できた。

あった、あった。ハンガー2個の取付・・・暖かい日なのでグローブを防寒タイプの薄手の作業用手袋に付け替える。
これなら、岩角で擦れて擦切れても580円・・・惜しくないね。
気温−6℃。ロープをつけて、スタート。取り付きから少し悪いけれど、前日、遠藤ガイドからアドバイス頂いていたので、その通りのライン取りを
心がける。傾斜が緩いので何となくどこからでも登れそうなので、これが逆に難しくしているように思う。
片手にアックスを持って、ホールドを指で探り、草付があればアックスを叩き込む。硬く凍った草付にアックスがよく決まり安心感がある。
ボロい岩に注意しながら、中間で一度切って二人を迎える。

バンド状を左上して斜面のヘリ沿いに進む。灌木まで支点なし。灌木でスリングで支点をとりながら今度は右上していく。ロープの流れが悪くなる。
短いけれど一度切っても良いかもしれない。その分次のピッチを伸ばした方が効率的だと思う。どうしようか?考えつつそのまま重いロープを引き
もう、ダメと立木でビレー。後で聞いたらロープも45m程出ていたので次の樹までは厳しかったかな?
もう、1ピッチ進んだ所で後続が見えたので、待って先行して貰う。



この冬から、冬クライミングを始めた姉ちゃん、akiちゃんは6月に御前ヶ遊窟下のアプローチの沢で倒木に左足を巻き込まれて開放骨折、ヘリ搬送。
9月下旬から登山再開。現在もリハビリ登山で今回の山行後の翌日入院、翌々日に骨折箇所のプレートを外す手術の予定でいたので、
絶対に落とすワケにはいかない・・・また、左足にダメージを与えてはいけない。そして、ヘタレのボク。という、3人パーティー。
これでは、スピーディーな登攀とは程遠い。
それなので、ボクの頭では@下部岩壁は早出して渋滞の原因にならない。A後続が近付いてきたらルートを譲る。こんな方法で後続に突かれて
焦ることなくマイペースで登攀して貰おうと考えていた。

何ピッチか急な草付を登って少し傾斜が緩んだパートで姉ちゃんにリードしてみる?と聞くとリードする気満々。ロープをシングル使いとしてリード
を代わる。灌木でランナーを取りながら登って行く。傾斜は幾分落ちているし、転落しても直ぐに樹にロープが引っ掛かるので大丈夫だろう。という
見立て。

傾斜の強いパートではリードを代ったりしながら進むが、ここで問題発生。
姉ちゃんのクランポンが外れるのだ、オイオイ勘弁してくれい。この後も数度外れる。前回も外れたので、お店で調整し直してきたというが
ボクの観たところ靴底とクランポンが全く合っていない。
そもそも、靴のソールが反っていてクランポンに合わせ難い靴だ。クランポンは店員と相談して購入したということだけど、どうしてこんな組みあわせ
を勧めたのだろうか?条件の厳しいルートでの使用であれば用具のセレクトも重要で安全性に関わる。

また、姉ちゃんは縦走向きの70cm弱のアックスを使用。やはり使い勝手が悪い。近年短いアックスが多くなってきた。
でも、飯豊、あるいは谷川でも天神尾根等は短いアックスでは使い勝手が悪く70cmはあった方が間違いなく使い易い。
しかし、岩稜等の登攀では50p位のものが使い勝手がよい。購入の際には実際どこで使うのか?これを考えて購入すべきと思う。
蛇足になるけれど、ボクはアックスは短めを使っている。これは傾斜が緩ければストックを使うから長いアックスは使わない。という考え方。
どのみち、ストックとアックス両方持って行くのであれば軽量で短目のアックスを持つ方が合理的と考えているからだ。
ただ、これはボクのセレクトの仕方で人それぞれで良いと思うけれど、コース全体の傾斜が緩く、アックス中心で考えれば長い方が使い勝手はよい。
流行り云々ではなく、どこで使うか?これが大事な所だと思う。

販売店側でも、アックスについても購入者の用途に応じたものを販売すべきだし
購入する側も最初の1本で理由もなく、50p台というのは?と思う。


今回の姉ちゃんの件で云えば販売店に疑問を持つ。
クランポンと靴底の相性は一番重要なところでキチンと押さえて販売すべきだし基本的な知識なはず。
申し訳ないが、クランポンを使用した山行の実践のない販売担当者なのではないか?
場合によっては生死に関わる重大事故につながる部分でもあり、購入する責任は登山者にあるけれど
販売員も十分な商品知識と実際に斜面の途中でクランポンが外れるというのは、どういうことで、どうなるのかを知っている人でなければ困る。
・・・・もっとも、ソコソコの経験者なら靴底の反り、コバの形状の相性等が一番気になるポイントではあるけれど・・・


オイオイ、と思っていたら、マヌケのボクはATCを落としてしまう。なんてマヌケだ。まっ、ボクはセカンドビレーなんで、どうにでもなるし、下に二人
いるので、借用しましょ・・・・でも、酷く落ち込んだ。ATCが無くて困るということでなく、ウッカリ重要なデバイスを不用意に落としてしまった。という
自分のマヌケさに腹立たしいし、落ち込んだ。

長い灌木帯を抜けると概ねルートの半分で、ここから上部岩壁まで雪稜帯。
明るく気持の良い雪稜をコンテで進む。ロープがダルダルにならない様に、停まるとき、障害物の通過のとき、お互い声をかけて
他のメンバーのペースに合わせて歩くんだよ。と云うのだが、不意に引かれるのが怖いと姉ちゃん。
ダルダルにすると、衝撃荷重で引きずりこまれるから、ペースを合わせることが大事と説明するが慣れないうちは難しい。
それでも、後半は随分慣れてきた。

上部岩壁で3パーティー待ってスタート。ここの取り付きも狭く登攀パーティー以外はセルフビレイが取れず嫌な場所。カム持ってくれば良かったかな。
取り付きの支点からスタート。凹角状から登りリッジに出てキョロキョロするけれど、いっこうに残置支点が見つからない。
いくら、ガバで階段状のスタンスとはいえ高度感のある所で支点がないのはやはり怖いものだ。

岩角、ピナクルにスリングを掛けて支点として登っていく。安定した場所に着いたら先行パーティがビレイ中。ビレイ点が一か所しかない。
広くて良い場所なんだけれど、ピナクルもない。仕方ないのでそのまま、ぼ〜っと待つ。

二人を迎え入れ、次のピッチへ。
これまた、屈曲するピッチ。傾斜が緩んで丁度良いピナクルがあったのでここで切ってビレーあとは簡単な緩斜面を歩いて稜線。

稜線からは富士山が見える絶景。ヤツはいいヤマだ。登攀はやはり稜線に抜けた時の気分は良いものだ。緊張しながら登り続け、一気に開放される
そんな爽快さがたまらない。絶景を楽しんで、軽食を摂りながら遅くなったね〜何時に帰れるのかなあ?まっ、気分が良いからこの際、
何時でもいいかぁ〜てなノリで下山開始。

地蔵尾根までは、南東斜面が多く、雪が腐って歩き難い。
地蔵尾根から下ると暑くて仕方ないので上着を脱いで下る。赤岳鉱泉でデポ品を回収して下山。
前日、あんなに固く氷結していた林道もすっかり緩んでいた。クランポンを履くことなく順調に下山、美濃戸口近くで少し暗くなり始めたころ鹿3頭が藪を
ノソノソ歩いていた。ボクに驚いて走り去る。お尻の白い毛が薄暗い藪のなかで妙に目立って可笑しかった。

美濃戸口に着いて会に下山連絡を入れて、樅の湯でユッタリ、ここのシュウマイが結構旨い。風呂上りにシュウマイにノンアルコールで喉を潤して
帰途についた。

※ ルートを譲り過ぎで時間がかかり過ぎた。でも、2人パーティでシングルロープで同条件なら3時間あれば稜線に抜けると思う。
※ 二人なら、シングルロープで十分(天候などで敗退含みなら絶対W)、支点が少ないのでスリング類(長め)を多めに。
※ 岩壁の取付は何れも狭く支点も少ないので小さめのカム数個あるとセルフビレイ用に便利かも?
※ 廣川氏のチャレンジ〜のルート図より雪稜パートが短く、草付の急な灌木帯が長い。急な草付の灌木帯が終わると約半分で、その上が雪稜帯



石尊稜 初登 1957年1月4日 山口輝久・坂野富雄

※ 3月19日午後、akiちゃんからプレートを外す手術は無事に終わったとメールが来た。
  事故から9カ月半位かな。長かったけれどようやく本当の事故終息となった。



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