梶川尾根上部植生復元登山道整備事業  飯豊連峰保全連絡会事業


GPSLOG 石転ビ沢源頭 梅花皮岳 幸七尾根(手前)  朝色の草原
今回の施工場所 梶川峰 地神山 地神山 奥は杁差岳 二ツ峰 奥は赤津山
中央奥 北股岳 作業中 皆でよく考えながら 施工の確認 水制の確認
中間検査?(笑 ネットの敷設 施工場所下部から 下山途中の手直し 帰路・・・蕎麦が花盛り


j実施日 平成21年9月06日(日)  本隊は05日(土)〜06日(日)
天 候  晴れ時々曇り
気 温  02:00〜15:00 16.4℃〜27.2℃
気象データ 山形県小国町
現地では風は珍しい位微弱であった。

装備
アプローチシューズ、軍手、合羽、長袖シャツ、薄手のフリース
ガスコンロ、ガス、握り飯、ラーメン、調理パン
参加者
公募、主催者側含め30名

概要
飯豊の稜線で荒廃の目立つ登山道も、その管理者の所在が明らかでなく、国有地、民有地、多くの市町村、新潟、山形、福島に跨り、自然公園では環境省、国有林では森林管理所が所轄権限があり、統一的に話し合いももたれる事も無かったがようやく環境省の音頭で一昨年より具体的に動き出し、天狗の庭で既に作業が行われている。

今回は登山者の利用も多い梶川尾根の上部について、水流によりガリーが顕著なっている箇所に水流のコントロールと植生ネットの設置が行われた。


コースタイム等
02:03 天狗平発(420M)
02:35 楢の木曲がり(720M)    少し下のケルン近くに献花
03:12 湯沢峰(1,020M)       給水
03:40 滝見場着(1,145M)      食事
03:45 滝見場発
04:13 五郎清水着(1,370M)     水汲み
04:26 五郎清水発           食事・給水
04:48 三本樺(1,540M)        ヘッデンを消す
05:05 梶川峰(1,700M)        無線を出すがでない  ブヨが酷く早々に立ち去る
05:45 扇ノ地紙(1,869M)       時間も早いので、今回施工場所を眺めながら歩く。 朝露で衣類ずぶ濡れ

06:50 扇ノ地紙(1,869M)       本隊と合流、施工場所まで下る。
07:03 施工場所着(1,800M)     施工開始
11:00 作業終了 大休止
12:10 下山開始             下山しながら修復作業、過去の修復場所の手直しを加える

13:22 三本樺(1,540M)
13:33 五郎清水着(1,370M)     かなり蒸し暑さを感じる
13:37 五郎清水発
13:46 滝見場(1,145M)
14:46 登山口着(420M)

記録
本来は、土日の2日間の全体作業ではあるが、勤務のため日曜日に日帰りで参加した。
作業開始が、午前7時から梶川尾根上部(梶川峰の上、扇ノ地紙の下)で開始なのでそれまでには到着したい。
このところ、梶川尾根を登る時はいつも20キロ以上だったことをウッカリ忘れて、今回は日帰り軽量なことを失念、時間を設定したので随分早く到着してしまった。


午前0時過ぎに起きてコンビニで行動食を購入して、天狗平へ向かう。2時少し前、天狗平に到着。
月はやや西の位置で煌々と輝き、数多の星も良く見えている。準備をして直ぐに登り始める。相変わらずの急登に合わせユックリと登る。

登山口から30分程登った所にケンルンがありその少し手前に、花が手向けてあった。そういえば、以前に梶川尾根で熱中症での事故があった記憶がある。記憶では、湯沢峰付近と思っていたがもっと下だったのか?それとも無関係なのか?
暗い中、ヘッデンの明かりを頼りに先ずは、湯沢峰を目指して進むが、ふと南の空にオリオン座が見える。冬の星座だと思っていたら9月上旬でも見えるのか・・・・ふ〜んと感心したりする。

湯沢峰に着くが、まだ食欲はないので給水のみで先に進む。時折、ヤマドリだろか?足元から飛び立つ鳥に驚くことがあるが、沢音以外は音も無く静かなものだ。

滝見場で食事を摂り進行方向を見ると、月明かりに梶川峰が浮かびあがっている。
このコースで傾斜の急な箇所は、登山口から湯沢峰手前と滝見場から五郎清水の間が急なので、ここはジックリ、ノンビリ登りたい。急な傾斜をノンビリと進んで、五郎清水。

五郎清水で水を汲みに行くが、朝露が凄い。水を汲んで食事を摂り三本樺へ向かう。五郎清水からは少し傾斜も緩む場所もあるが若干、ザレて歩き難いと感じる場所があるかもしれない。

三本樺でヘッデンを消して梶川峰へ向かう。梶川峰から先は傾斜も緩みノビノビした感じになるので、梶川峰に着けば登りの苦しい所からは開放された感じになる。
梶川峰に到着して、食事を摂ろうと思うが、どうにも酷いブヨの数。この時期にこれほどのブヨがこの場所に居るのはとても不思議な感じがする。
無線で門内小屋を呼んでみるが応答無し。ブヨの多さにたまらず小走りに先に進む。少し先で風が吹いてブヨも付いてこなくなった。ただ、笹の葉先にビッシリ付いた朝露が衣類を濡らして実に不快。特に長袖シャツの袖はビッショリになる。ビチャビチャの袖の感触の悪さに辟易しながら施工予定地に到着。
数年前の実証実験地では、ネットの合間から当初芽がでていたが残念ながら土砂の移動に歯止めがかからずネットの上を砂が走り、植生の回復を妨げている。当に今回の作業の中心課題である。

扇ノ地紙に到着したが予定より1時間あまり早く到着。OTJさんと思い梅花皮小屋を呼んでみたら、ODDさんでした。ODDさんによると、門内とまだ連絡がとれていない。食事中だろうとのこと。
門内小屋まで移動しようか?とも考えるがこの先も朝露で濡れるのは嫌だなと思い扇ノ地紙でユックリと朝食を摂ることにした。濡れた衣類が冷たいので、フリースと合羽を着てラーメンと握り飯で朝食。
食後は、ワオキツネザルのように太陽に向かい日向ぼっこ。大学生と思しきパーティーが通過。後でODDさんにお聞きしたら新潟大学の山岳部とのこと。

しばらくしたら、ニュージェックの川端さん、環境省の佐藤さん、アクティブRのだいちゃんら本隊メンバーが続々と到着。ボクも合流し施工場所へ。僅か数分で施工場所上部に到着。

施工場所は緩傾斜面から急傾斜面〜平坦部という比較的広い尾根で、雨水、融雪水が浸食しガリーを形成し始めている場所である。技術的な根幹は水流のコントロールにある。
水の通り道である水道(みずみち)と登山道を分けて登山道は歩き易いように工夫し、問題の水流のコントロールするための技術は、2007年8月3日〜4日天狗平ロッジでの講義、温身平周辺の沢での実習を行った登山道修復の研修会で講義を担当された近自然工法の先駆者である福留先生の教えによるところが大きい。

水流のコントロールは次のとおり
@ アーチ形状、縦積みの石、水タタキ石を配したブール&ステップ構造の小さなダム
A @に土砂を詰めた麻のマタイ袋を加えた@より少し大きなダム
B 障害物を乗り越えた際、水流が90°の角度を以って指向を変える特性を利用した石積み
施工場所は河川ではなく形成し始めのガリーであるので、大規模な工事ではなく全て手作業でできるものである。

水道(みずみち)以外のザレ場については誘導する登山道以外の場所に植生回復ネットを敷いてピンで固定し貼付けた。

登山道については、水道(みずみち)に施工したダム、ピンで貼付けた植生回復ネットに入らないように足場の良い方向に足置きの良い踏み石を配して誘導している。


小休止前に一度、川端さんから評価を頂き、作業終了後大休止とした。大休止をしていたところ、桃パパさんが丸森尾根から周回してきて合流。
下山途中、梶川峰上のケルン下でまるで沢状に洗堀された部分についても過去の施工の手直ししながら下山した。
修復資材資材は、植生回復ネット、土嚢、ネットの留め金具以外は、現地調達の土砂、岩石類を利用で行った。

なお、植生の回復、登山道の修復とはいえ、人間の力で一から十までするわけではなく、自然の力で流出する土砂に対し少しだけ人間が手を加えて、水の力の方向を変え、流速を落し自然の力で流出する土砂を自然の力で留める。
そして、植生の回復は、水流をコントロールし水を逃がして、土砂なるべく移動させないことで植生の自然の力で回復できるように環境を整えることを考えている。
植生回復ネットにしても特別なヒミツがあるワケではなく、保湿と土砂の移動を抑える目的で敷設する。そのことで、そこの場所に適した植生が回復していくはずである。

従って、一度施工したから、これでオシマイということではなく、何度も手直しが必要なものである。当に近自然工法に近い考え方である。福留先生の講習あるいは、この整備事業に関わったメンバーそのエッセンスを学んでいる。多分、個々のメンバーがこの場所を通りかかった時、10分もあれば小さなダムの幾つかは手直しできるだろう。
参加者の習熟度の高いことに驚いたことが今回の保全活動の感想でした。

朝の晴天から少しガスがかかる中、三本樺からは小走りで下山するが流石に湯沢峰から先はつま先が痛くなってきてペースダウンして登山口に着いた。



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