交流事業
山形五堰を訪れて

 今回、加治川ネット21のご厚意により、山形五堰を訪れることができました。
 国土の多くが急峻な山地で占められ、平地の少ない日本は、水路の拡大と共に発展してきたと言われています。しかし、水路の維持・管理を行う担い手の減少や都市化などにより、昔ながらの水路は減り、日本人の日常生活と水との関わりが希薄になりつつあります。このような状況の中で、素晴らしい水辺環境を未来へ引き継ぐには、何が必要なのかを考えるために、山形五堰を訪れました。
 当日、堰をご案内いただいた「山形五堰の流れを考える会」の鎌田隆二さんのお話によると、山形五堰は、山形市の市街地を網の目のように流れている5つの堰(笹堰・御殿堰・八ヶ郷堰・宮町堰・双月堰)の総称とのことでした。山形市は、最上川の支流の馬見ヶ崎(まみがさき)川によって形成された扇状地に発展してきた街で、このような地形的な特徴から、山形城への壕への水の供給と農業・生活用水の確保のため、馬見ヶ崎川の水を利用するために江戸時代に5つの堰を設けたことが山形五堰の始まりとお聞きしました。
 しかし、都市化に伴う山形市街地内の水田の減少や新たな灌漑用水路の造成などにより、山形五堰を利用する方々が減少し、その環境は悪化したそうです。そのため、水路の一部がコンクリートに覆われた地下水路になるなど、山形の市街地から水路の風景は失われていったとのことでした。
 花咲くバイカモ(左下)であふれる山形大学に隣接する笹堰 第六小学校に掲げられた五堰の看板
 これらのお話を伺いながら、山形五堰を訪れて一番強く感じたことは、市街地の中心部を流れる水路であったということです。
 農業用水路の保全や利用などの活動を行っている場所をこれまでいくつか訪ねましたが、その多くが農村地域であり、住宅や学校に囲まれた市街地で水路に価値を見いだし、積極的に活動を行っている方々のお話を伺うのは今回が初めてでした。
 現地を見ながら、山形五堰に特有な課題があることに気づきました。水路の構造や維持管理について、農村地域では農業者の利便性が最優先されます。それに対し、山形五堰では、水路を利用する農業者が少ないため、水路内の水量を確保するための取り組みが必要であること。さらに、水害や水路への転落事故など地域の安全への配慮した水路の構造も求められていました。
 また、三面コンクリート化された水路の改修や利用についても、多くの情報が得られました。流路幅が一定のコンクリート水路を、瀬淵構造をイメージして、岸を広げて流路幅を狭める工法や、堰の安全柵に子供たちの絵を展示するなど、様々な取り組みがなされていました。さらに、山形大学と協力して、キャンパスの周囲を流れる堰を保全型水路に改修し、地域住民と一緒にゴミ拾いするなど、若い世代への啓発活動を積極的に行われていました。
 「山形五堰の流れを考える会」は、まちづくり活動を行っている「羽州山形寺町界隈振興会」を母体に設立されたそうです。現在、考える会では、五堰をまちなかに残る歴史的遺産と捉え、時代と共に生きる五堰の研究にも取り組んでいます。花咲くバイカモが一面に広がる水路を見ながら、会の方々から水車の復元など将来の夢をたくさん伺いました。
山形市では、景観や文化を生み出す重要な要素として堰を位置づけ、コンクリートで覆われた御殿堰を復元する事業を繁華街の中心部で現在行っていました。この事業によってつくられる親水空間の保全や利用についても今後注目していきたいと思いました。 
 瀬淵構造をイメージした改修を行った八ヶ郷堰 日本一の芋煮会本物の鍋・馬見ヶ崎川

 NPO法人五泉トゲソの会 理事 樋口正仁