「第2回トゲウオサミット」in大野
−秋篠宮殿下にビールを注いでしまいました・・・−

1.はじめに  
 9月25日(土)、「第2回トゲウオ全国サミット」が福井県大野市で開催されました。
トゲウオとは、イトヨ、ハリヨ、イバラトミヨなどトゲウオ科に属する魚の総称で、水温20℃以下の湧水地帯のみに生息するため、地域の飲料水、生活用水、農業用水など良好な水環境の指標種として注目されている魚です。全国的にその生息環境である湧水が減少していることから生息地が激減し、そんほとんどが天然記念物や絶滅危惧種に指定されています。
 大野市の「本願清水」は、淡水型のイトヨが生息する南限地として、昭和9年に国の天然記念物に指定されました。その保護と環境教育の場として、平成13年に「本願清水イトヨの里」が開館しました。市内にある大野城の天守閣から周囲を見渡すと、大野市は典型的な盆地の中にあり、その中を九頭竜川とその支流が流れています。湧水がいたるところに自噴している様がよくわかりました。
 ご存じのとおり、新潟県でも中条町や五泉市は湧水が豊富で、イバラトミヨが生息しています。加治川流域においても2002年8月に新発田市六日町地区でイバラトミヨが再確認され、加治川ネット21でもその生息状況調査と環境保全活動を行ってきました。その活動が評価され、新潟県からは「五泉トゲソを守る会」(樋口世話人:サミットパネラー、中村副会長、風間世話人)と加治川ネット21(渡辺理事、藤田理事)が、このサミットに参加することになりました。
2.歓迎レセプション(9月24日午後6時〜)
秋篠宮殿下のご挨拶
 加治川ネット21も来賓として招待され、我々二人も秋篠宮殿下と会食することになりました。会場は「平服で参加」との指示だったので一応スーツを着用したのですが、紹介されたときに渡辺理事が「我々二人はネクタイはしていますが、足下はスニーカーで・・・」とスピーチしたたため、殿下は我々の足下を「ジー」と見ておられたとのこと。ちょっとはずかしい場面でした。
 その後会食が進み、渡辺理事が殿下にビールをお注ぎして・・・・・
渡辺「殿下は福島潟に来られましたよね。われわれはその隣の市から来ました。」
殿下「はい、かつておじゃましました。有名な植物がありますよね。」
藤田「オニバスはありますが、オオヒシクイの生息地としては有名です。」
  「新潟県ではイトヨを食べるんですよ、子供の頃はよく釣りました。」
殿下「えっ、イトヨを食べるのですか?どのように調理して食べるのですか?」
藤田「塩焼きか唐揚げです。」
殿下「スパイン(棘)はどうされるのですか?」
藤田「(われわれ平民は)気にせず食べます。はずして食べる人もいますが。」
殿下「食は文化です。ぜひ、記録として残しておいてください。」
 (藤田がここで再度ビールをお注ぎする・・・)
というやりとりだったと記憶しています。殿下は水域を中心とした環境保全に非常に関心がおありとのことでした。それにしても、殿下が御成になるということで、S.Pの方々は目を光らせているし、大野市の職員は大わらわでしたし、市長はじめ、知事、副知事も参加するなど「たかがトゲウオ」のために大変な会議でした。でも、「トゲウオの住める環境」にはそれだけの価値があることを感じました。
3.会議
子供たちによる「トゲウオ保全活動」発表
 総合地球環境学研究所の秋道教授、文化庁の花井文化財調査官から「トゲウオの住める環境が大切、地域の宝」といった内容の講演があり、その後、地元小学校の総合学習の成果の寸劇がありました。これがまた「涙うるうる」もので大変良くできていました。地元小・中学校を通じた総合学習が、ボディブローのように環境保全に効いているようです。参加者代表発表やパネルディスカッションでは、全国の保全状況や地域の保全団体の苦労や努力が伝わってきて大変有意義でした。なかでもイバラトミヨの亜種のムサシトミヨは、生息環境がなくなりかつてのトキ状態とのこと、「失われた自然を取り戻すことは守ることよりずっと大変」ということが伝わってきました。春に新発田を視察された秋田県立短大の神宮字助教授も元気そうでしたし、7月におじゃました遊佐の鈴木さんも相変わらず毒気をはいていました。新潟県を代表して世界的(?)なイトヨ研究者の樋口さん(五泉トゲソを守る会)が新潟の食文化としてのイトヨを紹介してくれました。
 コーディネーターの森館長の好リードで無事会議は終了しましたが、最後に殿下が「トゲウオ学」を興したらどうかと提案され、会場が盛り上がったまま閉会となりました。
4.おわりに
新潟県から参加した「五泉トゲソの会」「加治川ネット21」の精鋭達
 新発田から片道約500kmと大変遠い大野市ですが、石畳の散策路に城有り、寺町有り、朝市有り、そして湧き水有りと歴史と自然の豊かさを感じる町でした。残念ながら新発田市は、湧き水が少なくイバラトミヨの住む環境は決して良いとはいえません。加治川の冷たい水を利用しながら何とか絶滅を逃れているのが現状です。何年後かに殿下をお招きして「トゲウオサミットin新発田(???)」があるかもしれません。そのときに「絶滅してしまいました。」では全国に恥をさらしてしまいます。イバラトミヨは豊かな里山、里地、農地のシンボルです。イバラトミヨが生息できる空間は地域の財産です。みんなで守っていきたいですね。

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04/9/29掲載