森と周辺環境についての体験交流
           〜只見町・吉津さんとの出会い 2001/5/12〜
 「福島県只見町」と言うと多くの方は、奥只見ダムのある町と考えると思います。しかし正確には奥只見ダムは、新潟県も半分程県界があるため2つの県に関わる ダムとなります。
 その只見ダム下流の只見町にお住まいの吉津(きつ)耕一さんにお会いして来ました。
 訪問メンバーは若月さん、篠田さん、私と私の三男の4人の少人数でした。行程等は別紙企画書を作成しましたので、そちらを見て下さい。新発田を朝8時に出発してお昼前に只見町に着き、只見川支川の伊南川べりで早速「本の街」の看板を見つけました。

(「本の街」の事務所付近の様子)



 そこで吉津さんにあった訳で事前のメールでは午後から急用とのことだったのですが、時間の関係で本人に直接会うことが出来てとても良かったです。その後対応してくださったのは、ミニコミ誌「たもかく」 の編集長の若林奈津子さんでした。とても親切に私たちに説明をして下さいました。
さて取材概要は次のとおりです。




                                                                 (和やかに応対する若林編集長:右側)
 1)吉津さんてどんな人?
     昭和29年生まれで、只見町出身。地元高校を卒業し東京の大学在学中に体調を崩し地元へ    帰る。その後地元企業に勤務した後に、脱サラして現在のたもかく(株)を設立して現在に至る。
   NHKで「本の街」として紹介される。また新潟日報のコラム欄でも紹介される。著書「これか   らは田舎ぐらしがおもしろい!」他著書多数。
 
    昭和63年 (株)たかもくを設立する。
    平成 元年 長浜地内の苗畑の土地の取得
    平成 3年 グリーンパスポート(たかもく管理の入会地へのパスポート)の発売
    平成 6年 本と森の交換開始(本の店オープン)
    平成 8年 ホームページを開設
         名称変更してたもかく(株)にする
    平成10年 地ビールクラブの結成(支援)
    平成12年 地ビール工場完成(支援))
                 「たかもく本の森」池袋店オープン
    平成13年 5月現在蔵書160万冊更新中
)吉津氏の考え方は?
 地元の中山間地で管理する人がいなくなった山林の荒廃を防ぐため、古書売り上げの一部を山林の保全費用に充てている。森林交換はこれを支える事業。自然保護の姿勢に共感した都市住民が古本を寄せて山林のオーナーになるケースが多く、都市ー農村交流の拠点となっている。年間40万冊のペースで本が届いている状態。
 
3)本と森の交換はどうするの?  
    下の図のとおりです。

売 り 手 た も か く 買 い 手
古  本 山 林 古本  古  本
(定価の10%) (1670円/坪) (定価の50%)
             
 
  以上のような交換であるが、古本自体そんなに売れる物ではないから基本的に、多くは都会の人々の古本の処理に対してのリサイクルと同時に森の管理・地域定住化一役買っていると言う。延べ25000人の人が4万坪くらいの土地を取得している。地元利用しているのは16000人くらいとの事。また実際に岡林さんとい奥さんに話しを聞いた。(東京からのIターンの方でしたがこの地域に来て5年目という人でした)13年間に10人以上のIターン就職を受け入れているとのこと。
 
  4本の街にはどんなものがあるの?
 昔のチップ工場の跡地を買収した所で、事務所を含め11の建物(ウッドショップ・地ビール館・家具建築倉庫を含む)とJR貨物車倉庫6両となっています。
 
  5)他には?
 長浜カラマツの苗畑の跡地
ここはセカンドハウスを含め45棟の建物を建て、只見へ引っ越して来たのは20世帯30人くらいです。地元交流は各個人レベルの交流になっていて年々深まっている。この中で冬の間の管理を、地元の人にお願いする方向になってきている。
会社組織として、不動産・インターネット・パスポート・ミニコミ誌がある。
 
最 後 に
私たちがこの雪深い南会津地域を訪問したのは、川を考える場合、上流域の森の存在なくして語ることは出来ないと考えたからです。自明の利とはいえこの部分で、吉津さんの考え方は山林保全を本というキーワードを用いて地域を活性化させたと思います。それも行政の援助無しのベンチャー企業としてです。この山村地域でIT(情報発信技術)を駆使して全国に情報発信する先駆的な試みの成果とも言えます。最も地域の良さを再確認する必要があり、私たちも学ぶべき点は多くあった      (探検隊の精鋭参加メンバー)
と思います。具体的には森の手入れ(里山)や地域間交流などを通して過疎地域での定住化をさせる方策で、多様な価値観を交流をするなかで受け入れ、地域の良さを地域の人々に再確認させる方向を目指していると感じました。森の手入れが森林育成と同時に人間の自然環境への関わりを密接にするとも思いました。
  一言ですが、足元の開花期を過ぎたカタクリの花となだらかな稜線の浅草岳の残雪がとても印象的でした。最後に吉津さんのNHK編集のビデオテープをネットで購入しましたので各自視聴して下さい。                                    (文責: 渡邊秀美)