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     蒜場大日山行
               
平成30年5月3日~5月6日
本隊 上條(リーダー)、若月(記憶)
送りサポート 佐久間、石井、三田村、渡部(哲)
迎えサポート 矢沢、石井、石山、小野、高橋(陽)、阿部、諏方

行動概要
5月3日 6:00治水ダム~10:50蒜場山~15:00稲葉ノ平15:40(幕) 終日雨、視界なし
5月4日 テン場6:00~7:40丸子カル~10:50烏帽子山鞍部~13:30マグソ穴峰
      ~16:20キンカ穴峰手前1520m(幕)  終日曇り・霰、視界なし
5月5日 テン場8:00~13:00実川山~14:00西大日岳~14:45大日岳~16:40御西小屋(泊)   
      雷・霰、視界なし、夕刻晴れ
5月6日 御西小屋6:10~9:00烏帽子岳~10:00梅花皮小屋~13:00温身平(砂防ダム)14:00
     ~15:30梅花皮荘(入浴)    快晴


キーワードは七つの『しい』

『寂しい』
 坂場さんは前週のスキーでブナの大木に吸い込まれ打撲で怪我を負う。見せてもらったがいつ付けた傷か分からない傷も多数あり、几帳面でありながら無鉄砲さも同居している。なべちゃんにお願い「坂場さんを次回以降連れて行って下さい。」

『悲しい』
 何が悲しいかって、出だしから雨具着用での出発。しかも後半連休は荒天が暫く続くとの予報。
 雨具は防水スプレーをたっぷり利かせたが数時間も持たなかった。そもそも素材と経年に問題があるかも知れない。
 先頭を行くサポート隊はリードを解かれた犬のように、道刈で通い慣れた登山道を駈けるがごとく先を行く。岩岳、山伏峰でサポート隊と別れる際に、差し入れまで頂く。重くなるが、体力を削ってでも持ち歩かねばならない。暗い出発には心遣いがなによりも大事だからだ。
 晴れていれば蒜場から延々と続く尾根を眺め、その残雪量でコースの難度を推し量れるが、今日は全く見えない。蟹沢下降、山頂からは雪庇が張り出しているので、目標のツゲの木から角度を合わせ、下降を開始する。S字にクランクしながら右から尾根斜面が現れると、登り付けそうな場所から尾根に取り付く。下流は残雪が続いているようで、ボヤけた視界では大河が横たわっているようにも見える。尾根は薮が濃いので、左斜面の藪の薄い場所をトラバース気味に進む。
 蟹沢のカッチで角度を合わせ下降する。下り終わると雪堤となっているはずなのだが、ボリューム感が少ない。高立山手前分岐で残雪に騙され、正規のルートから少し外れるが事なきを得る。以前より高立山登りのカタクリの花は少ないと感じる。三角点は藪の中にひっそりと佇んでいた。
 一登りで水場のある稲葉ノ平に到着。周辺の木立は乳白色がかった空間に林立している。多くの先人がここに憩い、寝ぐらとしたであろう広い台地は、ぶなの木一本一本が先人の姿に見える。風はないが相変わらずの小雨で視界は利かない。上部の尾根筋にテントを張る。

『苦しい』
 二日目、静かな朝を迎える。出発前にして丸子カルまで雲が下がってきた。三菱ガス化学登山部が設置した標識プレートは白く退色したが健在だった。丸子カルの4つ目のピークはよく分からず雪面を彷徨う。烏帽子への尾根、ブッシュは濃いと予想していたが、予想以上に濃密だった。ヘロヘロで烏帽子山鞍部に到着。協議をして視界の利かない本峰三角点は坂場さんへの課題と次回に見送る。午後から天候が回復する予報なので、日暮れまで歩けば、「御西小屋泊まり」の淡い可能性に賭け先を急ぐ、この状況から早く脱したかったかもしれない。
 北峰からの下りはヤブの中からとなり、残雪を拾って楽な方に進んだため、若干距離と時間のロスがあった。時折ガスの切れ間から左に広いホウジョウ沢源頭が見えた。不思議な景観である。マグソ穴峰への鞍部に降り立ち、立ったまま行動食を口にする。雪混じりに加え風が出てきた。回復が遅れる天気と、この先も残雪が少ない藪を想像すると、引き返すなら此処かなと頭をよぎるが、リーダーはいっこうに弱音を吐かない。もはや小屋でぬくぬくする淡い期待はなくなった。今日の行動からすると御西小屋までは無理のようだ。これから悪天候が予想される中、稜線上で幕営することになる。上部はスッポリと濃い雲に入っている。靴の中は金魚が泳げる。
 キンカ穴峰への上りが思ったより薮が濃くてきつい。尾根右斜面に残雪は見えない。例年はその残雪を利用できるのだが・・・。西の方角から黒い雲がお呼でもないのにやってきた。一陣の風と雷鳴で雪が降ってきた。周囲はどっぷりと黒いガス帯の中に入ってしまった。風に飛ばされないように慎重にかつ急いでテントを設営して中に潜り込む。ウィスキーなんとなく自粛。夜半はテントポールを曲げる風と叩きつける雪と寒さで寝られなかった。

『恐ろしい』
 3日目の朝、疲れと気持ちが折れて出発は遅い。天気予報は午後から回復、明日は快晴との予報を信じ、前進する。30m位の視界か。右は断崖絶壁、左は身の丈を越す藪、淵を慎重に歩む。ぼんやりとキンカ岩を左に見て藪と残雪を半分ずつ進む。雷鳴が遠くに鳴り出し徐々に近づいてくる。光と音が同時に頭上に響く。思わず身を伏せる。霰が容赦なく叩きつける。霰を伴う雷は近くにあると言う通りだ。雷の度に何度も行動・停滞を繰り返し、時間が過ぎていく。

『楽しい』
 地図、コンパス、高度計、持ち物をフルに活用する。基本に忠実な行動は安心していられる。雪原10mも離れると先を行くリーダーの姿が消える。落ちたかと心配すること数回、輪郭が浮かぶとほっとする。実川山の若干の下りを確認してから残雪に乗り薬師岳の登りにかかる。藪を左に見て進む。薬師岳からは左斜面を進む。西大日岳三角点を確認後は前も左右も見通せない広い尾根筋を辿る。行く手に一瞬大日岳が神々しい姿を現す。今までの厳しい状況での救いは風を背に受けていたこと。
 大日岳山頂は烈風吹きすさび体を持っていかれそうだ。追い立てられるように御西岳への下り斜面に向かう。コンパスで方向を定め尾根が出てくるまで雪壁をクライムダウン、もう少し雪が硬かったら前爪無しの6本爪アイゼンではやばかった。下り終わると嘘のように視界が開け風もなくなる。苦労して降りてきた斜面に直線的ではない『し』の字のトレースが刻まれていた。最初の出だしは明瞭に右側に雪稜が見られるが、そのまま下って行くと途中で無くなるのでしの字になったようだ。大日の山頂はその雄姿をいつの間にか開空したばかりの背景に矛先を重ねていた。試練の終了を告げたような姿だった。今日か昨日かの新雪は登山道を覆い時折踏み抜く、疲れた体に鞭を打ち貸し切りの御西小屋に入る。二日間ほとんど飲めなかったが今晩は格別。寝つきは良かったもののガランとした小屋は寒く夜半は昨夜まで同様ガタガタ震える。
 4日目は快晴の稜線漫歩。加治川源流部対岸の辿ってきた尾根や谷をじっくり観察出来る。四日目にして初めて雨具を畳む。なにも見えなく、写真もほとんど取らなかったが、見えないことで真剣にルートを探りながら進むべき方向を選んで進むことの面白さ、藪に手こずりスリップしても足を前に前に出し、体をよじって犬ツゲの木を避けながら、突破してきたことが楽しく感慨深く、行動中晴れていなくて良かったと思った。

『嬉しい』
 石転び経由で下山、迎え隊の暖かい出迎えを受ける。連休の最後で天気もよく、他に行く用事もあっただろうに。只々感謝。新緑の中での懇親タイム、人恋しさに陥っていた我々にはその気持ちが何よりのご馳走で、満ち足りた気に幸福感に浸りました。
 今回はリーダーの強い意思を感じました。メンバーが少なくなっても、天気予報が良くなくても、計画を変えようとしない。変更することが想定外との話しを知ったとき、思いの度合いは負けたなと思い、ついて行くことを決めました。

『続けて欲しい』
 このコースはこれからも続けていって欲しい。蒜場山までの道は刈った。飛び込むステージは整っている。その先に踏み出すまで日々研鑽し挑んで欲しい。この延々と続くバリエーションルートは人を七つの『しい』で迎えてくれる。
そして私は、老いぼれても先細りでも体力気力が続く限り、延々と続くこの尾根に挑んで行きたい。

「♫ 朝焼け燃る大日へ いざ行こう我が友よ 飯豊の山に二王子に 北の山のザラメの尾根を飛ばそうよ ♫」


蒜場山山頂

西大日岳山頂

大日岳クライムダウン

烏帽子山を登る

石転び沢