※前のページに戻る時には、ご覧になっているブラウザソフトの『戻る』ボタンをご利用ください。m(_ _)m

ヒトES細胞の作製申請


 ES細胞を作製する研究計画が、京都大再生医科学研究所の「ヒト幹細胞に関する倫理委員会」に申請され審議が始まった。米国の研究機関から提供された人間のES細胞を使う研究計画は既に申請があるが、作製計画は国内で初めて。倫理委員会で計画が承認されれば、文部科学大臣の確認を経て、受精卵の提供施設に協力を依頼。早ければ来年はじめにも研究をスタートさせる。作ったES細胞は国内の研究機関に無償で配布されることになる(読売2001.6.14)。(よ)


 同じニュースですが、少し詳しいようなのでご紹介します。ES細胞は再生医療の柱として大きな期待を集めていますが、生命倫理の問題も避けて通れない課題であり、手放しでは喜べません。ただ、米国を中心としたバイオビジネスが先端医療分野を牛耳るのではないかという不安のあるなかで、ES細胞が国産化され、しかも無償で研究に提供されることは素直に喜びたいと思います。

 京都大学の研究チームは、ヒト胚性幹細胞を作る研究計画の審査を学内倫理委員会に申請したと発表。研究で先行する米国に対抗し国産化を目指す。

 研究を計画しているのは京大再生医科学研究所の中辻憲夫教授ら。不妊治療を受けた夫婦から不要になった体外受精卵をインフォームド・コンセントの上、提供をうけ、万能細胞を分離・培養して作る。作製した細胞は国内の研究機関に無償で分配する。「ヒト幹細胞に関する倫理委員会」は審査入りを決めた。万能細胞研究については、国の総合技術会議(議長小泉純一郎総理)が夏までに指針を作る予定で、倫理委はその決定を待って実質審議を始め、結論を出す。倫理委で承認された場合、国の委員会で承認を受ける必要がある。承認手続きと作製作業が順調に進めば、来年前半にも国内初の万能細胞が研究に利用できるようになる見通し。(日経2001.6.14)

 ES細胞の利用については批判も多く、先日の文部科学省の公募意見には次のような意見が寄せられています。具体的な反対意見を再認識した次第です。

●ES細胞利用反対意見
  • なぜES細胞研究が必要なのか、なぜ組織幹細胞ではいけないのかなどが明確に議論されないまま、研究推進が前提となっている。
  • さまざまな組織幹細胞が発見されており、ヒトES細胞の利用を急ぐより、これらの細胞の利用を検討する方が倫理的・実際的に優先される。
  • 保険診療扱いでもない、高額かつ大変な不妊治療の結果得られる受精卵を不要物のように解釈し、安易に研究に利用しようとする動きに嫌悪感を感じる。
  • 命の始まりをいつだと考え、どう扱うかは話し合いで決められるようなものではない。意図的に他の命を土台とした治療があることを残念に思う。
  • ヒト胚を保有している人は単に胚の宿主に過ぎず、インフォームド・コンセントなどの倫理的約束を胚に代わって行なうことはおかしい。
  • 人間の胚について国の規範を設けずに、ES細胞研究に限って国が公認するのは、先進国では日本だけである。(案山子)