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再生医療の最先端


再生医療
 病気やけがで傷ついた臓器を再生臓器(培養細胞)に交換する「再生医療」は、次世代医療として注目され、期待も大きい。

 京都大学再生医科学研究所は、笹井芳樹教授が協和発酵と共同で、マウスの万能細胞(ES細胞)から脳の特定の神経細胞を効率よく作り出すことに成功し、神経伝達物質(ドーパミン)を出す神経細胞を、比較的簡単に作る技術を確立した。この技術は、パーキンソン病の根本治療となる可能性がある。欧米では人間を対象とした臨床試験が数年以内に始まる見通しもある。

 再生医療のもとになるのがES細胞だ。これは、受精卵が分裂を重ね身体のもとになる細胞塊に成長した頃、一部を採取して培養させるもの。胚性(embryonic )幹(stem)細胞の頭文字からES細胞と呼ばれている。これを特定の胚に混ぜ培養すると、それぞれ特定の筋肉や内臓などの組織に成長する。

 マウスや牛では、ES細胞の組織を持つ融合個体(キメラ)が誕生している。米国では、人のES細胞の培養にも成功している。

 京大では、マウスのES細胞から血管を作り出している。京大再生研と田辺製薬は、共同でサルのES細胞を作ることに成功した。人間と体の仕組みがよく似たサルのES細胞を利用できるようになると、新薬開発などにも役立つとされ、田辺製薬は、今回の成果を新薬開発や再生医療ビジネスにつなげていく考えだ。

遺伝子治療
 大阪大学では、血管を新しく作る働きのある肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子を患者の体内に導入し、足の血管が詰まる閉塞性動脈硬化症や心臓血管の病気治療を始めている。

 理化学研究所は、「発生・再生科学総合研究センター」を神戸市に設置し、2002年から再生医療の基礎・応用両面の研究を進める予定。

 神戸市では「先端医療センター」を第3セクター方式で、再生医療の臨床応用を進める計画もある。

 さらに、独立行政法人総合工業技術研究所が、尼崎市に建設するのは「ティッシュエンジニアリングセンター」で、ここでは皮膚や血管など組織ごとに増殖、培養する技術研究を進める。加えて、厚生労働省が大阪に厚生科学基盤技術開発研究所(仮称)を設け、再生医療、ゲノム(全遺伝情報)等、次世代医療の基礎技術開発に取り組む計画もある。

 2002年には、世界的にも類例を見ない再生医療の大規模な研究拠点が関西に誕生することになる。(日経2000.11.16参照)

【ヒトゲノム解読までの流れ】
1985年・米エネルギー省がヒトゲノム計画構想を発表
1990年

・米国立衛生研究所(NIH)がヒトゲノムセンター開設
ヒトゲノム計画が本格スタート
1995年・インフルエンザ菌ゲノム解読
1997年

・酵母ゲノム解読
・かずさDNA研究所(日本)が藍藻ゲノム解読
1998年


・米セレーラ・ジェノミクスがヒトゲノム解読計画を発表
・国際ヒトゲノムが計画前倒し発表
・日本中心に国際イネゲノム計画がスタート
1999年・日米英の共同研究チーム、22番染色体の全配列を解読
2000年6月

・国際ヒトゲノム計画
セレーラが共にヒトゲノム解読ほぼ終了を発表
(案山子)


 私もヒトゲノム情報には関心を払っています。ひとつ問題なのですが、ヒトゲノム情報の解読は、クローン人間の誕生と結び付いて捉えられますね。パーキンソン病は遺伝子細胞の欠損によりドーパミン生成システムが破壊されることにより起きていると思われています。ES細胞を脳幹付近に埋め込み、ドーパミン生成に関わる神経細胞を殖やす治療法も出来ているといわれます。

 未だ根本的な治療法には至っていないものの、今日のヒトゲノム情報解読の推移を見ていると、パーキンソン病の完治技術が完成したときには、他の方面への遺伝子操作も許容されると思うのです。その行き着く先はクローン人間誕生であり、再生医療によるパーキンソン病の完治は、その過程に置かれていると思うのです。

 我が身ながら、そのとき私は治療を受ける気持ちになれるだろうか、が私自身の問題です。(s)


 ご指摘の通り、ES細胞を用いた治療は生命の根源である「胚」に手をつけることになるので、生命倫理に関わるようですね。

 ES細胞は未分化のまま分裂を繰り返します。これに何らかの刺激を与えると分化し始め、臓器を作る幹細胞になり、最終的には臓器を形成します。カリフォルニア州の「ジュロン社」は、ヒトES細胞の独占的な特許を取得し、世界中から注目を浴びている企業です。

 ジュロン社は、連邦政府がヒトES細胞の研究に予算措置しない中、この研究の権威、ウィスコンシン大のトムソン教授、ジョンホプキンス大のギアハルト教授ら3人に研究資金を提供し、トムソン教授がヒトES細胞の発見、ギアハルト教授も同様の細胞を相次いで発見するなど、一企業でありながら研究開発に貢献してきました。

 ヒトES細胞を手に入れるには、人の命の発生段階にある胚に手を下すことになります。人間は神になりかわってもよいのか、との批判もあります。何を禁じ、何を推進するのか、それが問題です。世界の情勢を見ながら、日本もヒトES細胞研究のガイドラインを発表したところです。(案山子)


 たいへん重要な内容の記事ですね。私が寝ている間も、ぼーっとテレビを見ている間も、科学者の方々は私たちの症状改善のために、研究をされているのだなあと感心しています。遺伝子治療の方も、ES細胞に負けないほど期待できる中味ですね。英国の方もちょっとリサーチしてみます。ところでその治療というのは、やはり手術なのでしょうか。(と)


 パーキンソン病の遺伝子治療を行うときは、線条体に治療用遺伝子(今回の自治医大の場合は3種類の酵素)を含むアデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターを、定位脳手術の方法を用いて注入します。 (よ)


  まだ実験段階で治療法の確立もこれからだと思いますが、「再生医療とは、人工的に培養して作った細胞や組織、生きた細胞を組み込んだ医療機器(バイオデバイス)などを体内に移植し、傷ついた臓器や組織を再生し、回復させる医療」といわれています。(日経2000.10.26)(案山子)